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71、祈神之宴 ⑨ ...
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【孔雀明王】
「姉様、必ず呼び覚まして、色欲の神の魔の手から解放してあげる。待ってて。」
戦いに負けた色欲の悪神は、外殻が砕けて倒れる中、無意識に白の女王を庇い皆の攻撃を受け止めた。
色欲恶神落败,破碎的巨蝎躯壳倒地,却下意识为尾部的白女王抵挡下众人的攻击。
【迦摩天】
「……ごほっ……白。」
……咳……白。
最後にもう一度か弱き白の女王を守ろうとしたが、その前に力尽きて倒れた。爆発が引き起こした火花を追いかけて現れた孔雀明王は、目の前に広がる光景を見た——
かつて美貌を誇り、美しく舞い踊った白の女王は見る影もなく、歪で不完全な怪物になってしまった。血まみれの彼女は、両足の代わりに切られた蠍の尾を使い、蠢き、あがいている。目覚めた白の女王は、いくらか自我を取り戻したようだ。目の前にいるのが誰なのかわかった時、彼女は嬉しそうな表情を見せた。
他最后一次想以臂膀盖住脆弱的白女王,却力竭倒在白女王身前。当孔雀明王追着炸裂的火光赶到时,看到了眼前的景象——
只见,昔日容貌倾城、舞姿动人的白女王,如今已是一个残破不堪的怪物。她的身躯血迹斑斑,双腿化为了断裂的蝎尾,如爬虫般在地上挣扎。醒来的白女王,双目中恢复了几分清明,当她看清眼前的人时,流露出欣喜的神色。
【白孔雀】
「青、どうしてここに?どうやって長老たちから逃げてきたの?」
小青,你怎么在这?你是怎么从长老们的手中逃出来的?
孔雀明王の額を撫でる彼女の喜びは、徐々に戸惑いへと変わっていった。
她的手抚上孔雀明王的额头,欣喜逐渐化为疑惑。
【白孔雀】
「いつの間に……こんなに大きくなったの?」
你是什么时候…长这么大了?
孔雀明王は彼女の手を掴むと、力強く握りしめた。
孔雀明王拉住了她的手,紧紧攥在手心。
【孔雀明王】
「姉様、私たちが別れてから、もう七年過ぎたのよ……」
姐姐,自你离开我身边,已经过了七年了……
【白孔雀】
「七年……七年か……道理で美人になったわけね、一瞬分からなかったわ。」
七年…七年啊……怪不得你已出落得亭亭玉立,连姐姐都差点没认出你。
【孔雀明王】
「姉様、どうして……」
姐姐,你到底……
【白孔雀】
「十数年前、即位の時、私は婚姻の秘密を、色欲の神が代々の女王の力を吸い取る悪神であることを知った。長老は真相を知りながらも、各地で女王の候補者を選び、孔雀の国に奉仕するとかこつけて、悪神に命を捧げるよう命じていた……彼らこそが本当の悪神よ。彼らの心に巣食う悪が、何千年もの間、孔雀の国を支配し続けてきた。そして悪神の毒は、いよいよ孔雀の国のすべてを侵した。土、作物、人の心、すべて悪神の支配下に入った。本当の悪を絶つために、私は神宮に嫁ぎ、自分の気持ちに嘘をついて迦摩天を夫にした。迦摩天が無防備になった時に、奇襲を仕掛けたわ。手間をかけて準備した幻術だったけれど、本当に効くとは思っていなかった。それはあくまでも、私は今まで彼に殺された女王たちとは違うと伝えるためにすぎなかった。」
十年前,我即位之时,就已得知了联姻的秘密,亦得知了色欲之神实为吸食历代女王力量的恶神。长老明知真相,却依然不断从各地挑选女王候选人,命她们将生命献给恶神,美其名曰奉献给孔雀国……他们才是真正的恶神,其心中的恶,支配了孔雀国长达千百年。直至恶神的毒深入孔雀国的骨血,土壤,作物,人心,无一不被恶神所掌控。两恶取其轻,我前往神宫联姻,违心地唤迦摩天为夫君。我趁迦摩天卸下防备之时袭击了他。但我并不觉得我精心准备的幻术陷阱真的会奏效,只不过是为了能在他眼中,让自己和千年来葬身于他手的女王们有所不同。
——数年前、悪神の宮殿
——数年前,恶神宫殿
【迦摩天】
「……面白い女だ、幻術に長けた女を見るのはいつ以来か。どれだけ努力をしても、結局生きながらえることはできないのだ。」
……你倒是有趣,吾已经许久不曾见过你这般善用幻术的女人。不过你费了这么大力气,却也没能保住自己的命。
【白孔雀】
「最初から、生きて帰れるとは思っていません。」
我本也没打算活着回去。
【迦摩天】
「ほう?」
哦?
【白孔雀】
「あら、迦摩天様は少し自惚れていらっしゃるのでは?あなたの手に落ちるよりも恐ろしいことなど、ないとお思いですか?ご存知ですか?孔雀の国において、色欲の神はもはや名ばかりの神に過ぎません。権力を握る長老たちは、どんな悪辣な手段も厭いません。この点に関しては、迦摩天様はその足元にも及ばないでしょう。」
怎么,迦摩天大人自视甚高,觉得不会有比落在你的手里,更加可怕的命运吗?你可知在这孔雀国中,色欲之神早就不过是名义上的神明,长老们享大权已久,其手段之毒辣,你远不能及。
【迦摩天】
「美しいだけの玩具のくせに、大層なことを言うな。」
不过是一个空有美色的玩物,倒是口气不小。
【白孔雀】
「玩具ですか?ですが迦摩天様、長老たちから見れば、迦摩天様も玩具に過ぎません。力をもらえなかったことで、彼らは逆恨みして、迦摩天様を排除する方法を見つけたのです。それだけでなく、家族を利用して私を脅し、迦摩天様を始末しろと命じました。」
玩物?可是迦摩天大人,你在长老们眼中,也不过是一个玩物。一切只因你没有将法力传给他们,所以,他们一直对你怀恨在心,早就准备了除去你的方法,甚至私下挟持了我的家人,胁迫我来行刺你。
最初、迦摩天は彼女の言葉を信じなかった。彼女を宮殿に閉じ込めると、彼は傷つけたり、癒やしたりしてあらゆる刑罰を試みた。しかし何度繰り返しても、女王の心は折れなかった。
迦摩天起初并不相信她的话,将她关押在宫殿中,百般折磨又反复治愈,无论多少次都无法摧毁女王的意志。
【迦摩天】
「本当に面白い女だ、どれだけ刑罰を受けても同じことを言い続ける。どうやら老いぼれどもに罰を与える必要があるようだ。」
你倒真是个有意思的女人,如此折磨都未能让你松口,看来吾有必要警示一下那些老东西。
【白孔雀】
「孔雀の国の実権を取り戻したくはありませんか?私は長老たちの隠れ家を、城を守る守備軍の拠点を知っています。」
若你想要夺回孔雀国的实权,我知道长老们的藏身之处,也知道国中城池的守军据点。
【迦摩天】
「名ばかりの女王に甘んじる汝ではなかろう。汝もまた欲しているのだろう……唯一無二の権力者の座を。しかし、汝が長老たち以上に吾に尽くすという保証がどこにある?ならば、吾と契約を結ぶのだ。吾が死ねば、汝も最期を迎える。」
你不满足于做一个没有实权的女王,你真实的目的…也是那权利的顶端吧。只是到了那时,吾要如何保证你能比长老们更听话呢?不如,你与吾签下契约,若吾死去,你也不能独活。
それを聞いた白の女王は、顔色一つ変えずに指の腹を噛み破ると、迦摩天に手を差し伸べた。
白女王闻言,面不改色地咬破了手指,将手伸向迦摩天。
【迦摩天】
「我が妻よ、こうも安々と残酷な決断を下すとは、一体どんな地獄を経験してきたのか。」
吾的妻子啊,你究竟品尝过世间的多少苦楚,才有了今日的铁石心肠。
【白孔雀】
「私は地獄を体験したわけではありません……むしろこの世で一番素敵なことを経験したのです……おかげで国の頂点に、迦摩天様の前に立つことができました。」
我一生所品尝过的,并非是千种万种的苦楚…而是这世上最甜蜜美好的东西……是它使我站在了一国之巅,站在了你的面前。
【迦摩天】
「それは何だ?」
那是什么?
【白孔雀】
「……」
その後、白の女王と手を組んだ迦摩天は、何度も長老たちの領地を襲撃し、その勢力を削り続けた。数年後、長老の半分以上はすでに命を落としていた。女王の座は空いたまま、国中は不穏な気配が漂っていた。その時、孔雀の国中に名を轟かす神女に関する報告が届いた。その正体を知った白の女王は居ても立っても居られなくなり、ついには悪神に懇願した。
在那之后,迦摩天和白女王联手,不断攻击长老们各自的自留地,削弱他们的势力范围。数年后,长老会的人数就只剩下不到一半,女王之位空悬无人能即,举国上下人心惶惶。就在这时,传来了名震孔雀国的神女消息,得知她的身份后,白女王心神不宁,最终她向恶神请求道。
【白孔雀】
「我が愛しき夫よ、あなたは孔雀神女のことをよく思っていないと聞きました。彼女との交渉はどうか私に任せてください。必ずや御身の前にひれ伏すよう説得してみせます。」
敬爱的夫君啊,听闻那孔雀神女,惹您不快。不如派我去向她谈判,我定能说服她,让她臣服于您。
【迦摩天】
「余計なことはしなくていい。神女とやらのために頭を悩ます必要はない。やつを殺すことなど容易いことだ。」
不必多此一举,何必为那小小神女浪费功夫,取她性命,不过轻而易举。
【白孔雀】
「そうですね、迦摩天様にできないことはありません。お怒りが収まらないようでしたら、私が舞を捧げましょう。」
也是,夫君有什么是做不到的呢,就让我为你献上一舞,宽慰你的怒火吧。
ひらひらと舞いながら幻境を展開した白孔雀は、迦摩天に不意打ちをかけた。鋭い羽が彼の胸を切り裂き、もう少しでその首を切り落としそうになった。迦摩天が白孔雀を止めた瞬間、幻境は忽ち消えた。
白孔雀翩翩起舞,施展幻境,向迦摩天偷袭,锐羽划伤了他的胸膛,离颈脖只差一步之遥时,迦摩天制住了白孔雀,幻境轰然瓦解。
【迦摩天】
「汝の幻術はまた上達したな。このまま精進し続ければ、いつしか吾にも見抜けなくなるかもしれない。しかし残念だが、神女とやらのせいで隙だらけだ。吾を裏切ればどうなるか、わかっているな。吾は汝の国を焼け野原に変え、汝も、汝の妹も葬ってやる。」
你的幻术愈加炉火纯青了,假以时日,或许连吾也无法看清。只可惜一个区区神女竟让你破绽百出,你知道的吧,背叛吾的下场。吾会踏平你的故国,让你,和你的妹妹一起陪葬。
【白孔雀】
「我が愛しき夫よ、偉大なる神であるあなたが、この程度のいたずらに本気を出すのですか?それに、この数年間それなりに力を分け与えていただきました。まずはその力を取り戻す必要があるのでは?契約を結びましょう。我がすべてをあなたに捧げ、我が血肉はあなたの糧となります。あなたと一つになり、永遠にその毒にもだえ続けることを誓います。ただし、私が音を上げない限り、孔雀の国を呑み込むことはできません。こんな契約は、いかがでしょう?」
夫君,您是神明,又如此强大,怎与我这样的舞姬一般见识。更何况,这些年来你为我注入的法力,也不想平白失去吧。我愿定下契约,与您合为一体,骨肉相融,成为你的饵,永恒地被你的剧毒所折磨。但只要我一天没有因疼痛而求饶,你就永远不得吞噬孔雀国,如何,你可敢与我定下契约?
【迦摩天】
「はは、面白い。苦痛に歪む汝の顔が楽しみだ。そのための方法ならいくらでもある。その時、果たして汝はまだそう言っていられるだろうか?ただし、一つ条件を加える。汝が降伏した暁には、吾は孔雀の国を、そして汝の一番大切な者をも喰らい尽くしてやる。」
呵呵,有意思。吾有无数种方法折磨你,让你求生不得,求死不能,到时候看你还能否坦然说出这些话。而且,吾要在契约上加一条。待到你屈服之日,吾不仅会吞噬孔雀国,亦要尝尝你心中重要之人的滋味。
——破壊された舞台の下
——破碎的舞台之下
息も絶え絶えになった白の女王は、近くの灰に目を向けた。
奄奄一息的白女王望向不远处的灰烬。
【白孔雀】
「数年後、私と一つになった悪神は、孔雀の国に攻め入ろうとしていた。そんな時、突然現れたヤマタノロチが私たちを喰った。結局私が立てた計画には、何の意味もなかった……」
许多年后,我与恶神融为一体,准备杀入孔雀国,然而八岐大蛇却先一步出现,并将我们吞噬,到头来我的谋划也不过是场无用功……
【孔雀明王】
「違う、もし姉様が悪神をけしかけていなければ、長老たちの勢力は衰えたりしなかった。私の計画もうまくいかなかった……」
不是的,若不是姐姐你挑起了战争,长老会也不会元气大伤,我的计划也绝不会那么顺利……
白の女王が孔雀明王の腕を力強く掴む。
白女王猛地抓住了孔雀明王的手臂。
【白孔雀】
「やったの?」
你成功了?
【孔雀明王】
「ええ。」
没错。
それを聞いて、白の女王は心から安心した。力が抜けた彼女は、孔雀明王に抱かれて、最後の抱擁を楽しんでいる。
闻言,白女王一直悬在胸中的一口气,终于落了下去,她的身体软了下来,在孔雀明王的怀中享受着最后的拥抱。
【白孔雀】
「あなたはもう女王なのよ、みっともない姿を……見せてはいけない。そして私は、先代の女王だから……こんな無様な姿を晒してはいけない。」
你已经是女王了,不应该…这么狼狈。而我,是前任女王,也不该让人…看见这副狼狈的样子。
孔雀明王が素早く涙を拭く。
孔雀明王飞快地擦干了眼泪。
【孔雀明王】
「姉様の言う通り、孔雀の国の女王は古くから、美しい舞が誇りだった。女王でいる限り、民が敬う国王の名に恥じぬ振る舞いをしなくてはいけない。女王は国のために、万物のために舞い、踊る。そして最後の時だけは、自分のために踊る。先代の女王——白孔雀様、汝の波乱に満ちた人生に舞を捧げる!」
你说的没错,自古以来孔雀国的女王舞姿动人,自即位至退位,无时无刻,都是万民仰望的一国之表。女王为国而舞,为世间万物而舞,最后,才为自己而舞。前任女王——白孔雀大人啊,请容我,为你风雨飘摇的一生,献上一舞!
白孔雀のもう半分しか残っていない体を抱きしめる孔雀明王は、姉の体を隠すため、己のきらびやかな羽衣を羽織らせた。彼女は幼い頃に舞を教えてくれた姉を真似て、蛇の屍が転がる舞台の上で、ゆったりと厳かに舞い踊る。白の女王は子供の頃のように彼女に寄り添いながら、拍子に合わせて失った尾羽を揺らしている。二人は心に刻み込まれた舞を踊りながら、二人しか知らない古の歌を口ずさむ……
孔雀明王怀抱着白孔雀只剩一半的身躯,将自己华美的羽衣披在了她的身上,以遮挡那残破的身体。她模仿着年幼时姐姐手把手教导自己的样子,在遍布蛇蝎尸骸的舞台上,缓慢而庄重地起舞。白女王如儿时那般与她依偎着,摇动着已不复存在的尾羽。二人一起踏着那只存在于心中的舞步,哼唱着只有彼此铭记的古老歌谣……
【白孔雀】
「これが私たちの最後の舞……私が最初に、そして最後にあなたに伝える舞……忘れないで、あなたは国を統べる者、人々が憧れる偶像、女王だということを。でも私の妹であることも、まごうことなき真実。舞姫ではないあなたは、誰にも属さない。あなたは、私の自由な妹、私の…………自由の夢。」
这是我们的最后一舞…是我最初,也是最后能教给你的……要记住,你是一国之君,是万民之心所向,是女王。但你也是我的妹妹,你不是舞姬,你不属于任何人。你是,我最自由的妹妹,我最自由的…………梦想。
白女王最终闭上了双眼。
【孔雀明王】
「約束する。私は自分を貫いて、孔雀の国を平和な国に変え、すべての舞を新しい未来を迎えるためのものにしてみせる。」
我答应你,我会一直做我自己,我会将孔雀国变成一个真正歌舞升平的国度,让每一场祭舞,都是为了迎接新的未来而舞。
舞台の近くにいる人々は、二人の女王の別れに感動していた。
不远处的舞台之下,众人都为两位女王的告别而动容。
【鈴彦姫】
「あんたは……?」
你是……?
【阿修羅】
「舞台上のあの人に借りがあってな。心配するな、手を出すつもりはない。しかしあの巨蠍の呪いは……何やら懐かしい気配を帯びているようだ……」
我只是欠那台上的某人一个人情,此番前来无意出手,不必紧张。只是那巨蝎身上的诅咒…似乎,有着某种熟悉的气息……
【御饌津】
「晴明様、そろそろ最後の悪神を封印しましょう。」
晴明大人,是时候将最后的恶神封印了。
それを聞いて我に返ると、晴明は頷いた。
晴明闻言回过神来,点了点头。
【晴明】
「そうだな。」
说的不错。
晴明が天羽々斬を呼び出す。その時、巨蠍の体が透明になったかと思うと、その腹部にある呪いの烙印が突然眩しい光の奔流となり、天羽々斬に向かって飛んでいった。
晴明唤出天羽羽斩,然而巨蝎的身体随之变得透明,腹部的诅咒印记突然迸发出刺眼的强光,化为无数光点,朝着天羽羽斩中飞去。
【神啓荒】
「晴明、やめろ——」
晴明,停手——
——その頃、太陽の近くの空
——与此同时,太阳附近的天空中
ヤマタノロチは金色の巨神の手の中に釘付けになっている。須佐之男は稲妻を呼ぶと、それを金色の鎖に変えた。しかし何度も地上の人々の様子を覗いていたヤマタノロチは、晴明が天羽々斬を取り出したのを見て、謎めいた微笑みを浮かべた——
巨蠍の腹部にある呪いの烙印が、突然怪しく光り出した。
八岐大蛇被钉在金色巨神的手心,须佐之男召唤雷电凝聚为金色的锁链。然而八岐大蛇频频望向地面上的众人,在见到晴明拿出天羽羽斩之时,嘴角露出诡异的笑容——
只见,巨蝎腹部的诅咒印记迸发出古怪的光芒。
次の瞬間、いくつもの天羽々斬が抜かれた。刀身に呪いの烙印が浮かび上がった天羽々斬は、何かを探すかのように振動し続けている。
一方、須佐之男が作った稲妻の鎖も、赤黒い蛇魔と化した。同時に、彼の手に集う荒ぶる赤い稲妻は、恐ろしい威力の、荒々しい雷霆となった。集い続ける稲妻は暴走し、巨大な赤い雷槍を形作った。突然放たれた赤い雷槍は、巨神の手を振り解き、太陽に襲いかかる。須佐之男はすぐに右手に金色の鎖を作る。一瞬で雷槍に追いついた鎖は、太陽に刺さる前にそれを縛り付け、動きを封じた。ヤマタノロチはその機を逃さず拘束から逃れた。雷槍を掴み、腐敗の力を発動すると、槍は獰猛な蛇魔となって須佐之男に襲いかかった。
紧接着,几柄天羽羽斩都冲出了剑匣,如同在寻找着什么一般不断震动,剑身上也浮现出诅咒的印记。而须佐之男的雷电锁链,竟纷纷化为了黑红色的蛇魔。
同时,狂烈的红色雷电不断在他手中凝聚,形成剧烈的雷暴,其威力胜于平时惯用的攻击。不断释放的雷电近乎失控,凝聚为一把巨大的红色雷枪,骤然向外射出,竟一击劈开了巨神法相的手掌,朝着太阳袭去。须佐之男迅速以右手凝聚金色锁链,锁链立刻追着雷枪飞去,将枪身缠绕,阻止其刺入太阳。八岐大蛇趁机从法相手中挣脱束缚,他握住雷枪,将其腐化,枪头化为狰狞的蛇魔,朝须佐之男刺去。
【須佐之男】
「姑息な手を。」
雕虫小技。
【神堕ロチ】
「須佐之男よ、今のお前はもう処刑人などではない。血の匂いを嗅ぎ、本性を現した獣だ。今も鮮血の味を欲している。」
须佐之男啊,如今的你可不是什么行刑人,而是闻见血腥就现出本性的野兽,迫不及待地想要品尝鲜血的味道了。
そう言うと、ヤマタノロチは巨神の体のすぐ側を急降下した。須佐之男もすかさずその後を追う。赤黒い稲妻が何度も蛇神を撃ち落とそうとしたが、力が暴走しているせいで回避されてしまった。それを見た須佐之男が加速して、ヤマタノロチを追いかける。しかし突然足を止めたヤマタノロチは、唐突に振り返ると、槍で須佐之男を突いた。須佐之男は間一髪で、暴走している左手で槍を受け止め、腐敗した槍に左肩を貫かせ、その激痛を利用して暴走した力を抑え込んだ。見上げると、笑みを浮かべるヤマタノロチと目が合った。
言罢,八岐大蛇紧贴着法相的身体俯冲而下,须佐之男紧追其后,红黑色的雷电一次又一次地朝着蛇神的方向击去,却因失控而频频被蛇神躲过。见状,须佐之男加速追上八岐大蛇,不料八岐大蛇突然停步,一个转身,一枪向须佐之男刺来。情急之下,须佐之男以失控的左手挡下刺出的枪头,任由腐败的雷枪将自己的左肩刺穿,以剧痛压制失控的力量。他抬起头来,对上了八岐大蛇带着笑意的双眼。
【神堕ロチ】
「「神器は処刑の神の骨を芯とする」。それがどの骨か、ずっと考えていた。」
「神器以处刑之神骨为芯」,我一直在想,是哪一块呢?
槍先が須佐之男の骨の隙間に入り込む。一度槍を回して簡単に抜けないようにすると、ヤマタノロチは須佐之男を巨神に叩きつけた。
枪头插进了须佐之男的骨缝,枪身一转,锐利的枪尖卡在其中,稍一发力,竟逼着须佐之男撞向巨神法相。
【神堕ロチ】
「神は並ならぬ回復力を備えているものだが、その中でもお前はすば抜けている。あの時えぐり出された骨も、すでに生えているだろう。しかしつまるところ、それが骨であることは、天羽々斬がお前の一部である事実は変わらない。六悪神がかつて天照の一部であったように、私がかつて虚無の海の一部であったように。善悪が混ざる時、隔てることのできない純粋な魂が初めて誕生するように、どこに逃げようと、それは必ずお前を見つけ出す。そう、まさに今のように。天羽々斬は、妖魔はもちろん、神々を含む、数え切れないほどの命を処刑してきた。そして今、罪はすべて元の場所に戻った——それはお前の新たな骨となり、お前のすべてを塗り替えようとしている。」
神族的恢复力向来不同寻常,你更是其中佼佼者,想来当时剔去的骨,如今也已长出来了。然而骨终究是骨,天羽羽斩终究是你的一部分,就像六恶神曾是天照的一部分,就像我曾是虚无之海的一部分。就像善与恶融合在一起,才成为了不可分割的纯粹灵魂,无论你逃到哪里,它们终究会找到你,就像现在。天羽羽斩处刑了无数生灵,其中有妖魔,更有神灵,而这些罪孽如今都回到了原本的地方——它们化为了你的新骨,更要将你的一切,都替换一新。
そう言うと、彼は槍の柄を握りしめ、須佐之男の左肩にさらに深く刺した。
言罢,他握住了枪柄,抵住了须佐之男的左肩。
【神堕ロチ】
「処刑の神よ、罪を認めるか?」
处刑之神啊,你可认罪?
ヤマタノロチが腐敗した雷槍を抜くと、瞬く間に、須佐之男の左肩から腐敗した血が噴き出した。
八岐大蛇将腐化的雷枪猛地拔出,一时间,腐化的鲜血自须佐之男的左肩喷薄而出。
【神堕ロチ】
「天羽々斬を作った時、天照は教えてくれたか?すべての殺業は、やがてお前に返ってくると。滅びの女神のお気に入りのものを横取りするとは、須佐之男、お前は本当に度し難い。今こそ、お前が侵した罪を思い知らせてやる!」
当年铸造天羽羽斩时,天照可曾告诉过你?所有杀孽都最终会回到你的身上?想从毁灭女神的手中夺取她想要的东西?须佐之男,你可真是罪孽滔天。现在,是时候让你感受一下你自己所犯的罪孽了!
須佐之男が赤黒い堕神の血で血まみれになると、禍々しい力は赤黒い蛇の大群へと姿を変え、須佐之男の金色の体を完全に包み込んだ。
黑红色的堕神之血喷溅了须佐之男满身,不祥的力量化为巨大的黑红色蛇群,将他金色的身躯彻底包裹。
——破壊された舞台の下
——破碎的舞台之下
地上にいる人面の巨蛇が再び蠢き始めた。突然口を大きく開いた巨蛇が、人々に激突する。祈祷の舞を捧げる舞台は重圧に耐えられなくなり、巨蛇に押し潰された。間一髪で、孔雀明王は羽を飛ばして結界の四角を繋ぎ留めた。
地面上的人面巨蛇再度蠢蠢欲动,只见它突然扬头张开巨口,朝着众人撞了过来。祈愿之舞的舞台不堪重负,在巨蛇的身下化为废墟,情急之下孔雀明王射出羽毛固定住结界四角。
【孔雀明王】
「いけない、さっきの怪しい烙印のせいで、巨蛇がまた蘇った。」
糟糕,刚才那个诡异的印记,让这巨蛇又复苏了。
【鈴彦姫】
「もう少し耐えて!」
撑住!
鈴彦姫は舞台だった廃墟に飛び乗り、七支刀を利用して舞台を支えた。巨蛇の腹部から噴き出す毒血が無数の蛇に化け、すでに限界を迎えた結界を破壊した。
铃彦姬跃上舞台废墟,用手中的七支刀支撑舞台,巨蛇腹部的伤口喷出毒血,顿时化为遍地群蛇,彻底冲破了摇摇欲坠的结界。
【縁結神】
「早く乗るのじゃ!」
大家快上来!
地面すれすれを飛んできた朧車が生存者を乗せていく。しかし少し進むと、朧車は急に空中で止まった。蛇の大群が互いの尾に噛みつき、朧車に絡みついている。
胧车低空飞过勉强将舞场上幸存的众人拉上了车,然而胧车还没飞多远就停滞在了半空,竟然是群蛇首尾相连,将胧车缠住。
【燼天玉藻前】
「焚天九尾。」
焚天狐火。
妖力が生み出した狐が蛇の大群に切り込み、瞬く間に周囲を火の海に変えた。蛇の大群は朧車への攻撃を諦めたものの、次の瞬間、びっしりと建ち並ぶ民家に火事を蔓延させるため、動き出した。大惨事が起きる寸前、突然現れた刀が蛇の大群を一掃し、まもなく民家に蔓延しようとしていた火を消した。
妖力化为玉狐冲入蛇群,转眼间便点燃了一片火海,群蛇松开胧车,却方向一转将火引向鳞次栉比的民居。眼看大祸即将酿成,利刃横空出世,一刀斩了那长蛇,也斩灭了快触及民居的火焰。
【鬼切】
「危なかった。」
好险。
駆けつけた援軍の鬼兵部は、城を中心に二つ目の結界を縮小し、結界を突き破ろうとする巨蛇を閉じ込めた。
鬼兵部援军赶到,将第二层结界的外围向城中心推进了数里,再次将试图冲破结界的巨蛇困在其中。
【藤原道綱】
「晴明様の策に従って、念のためにもう一つの結界を用意しておいてよかった。」
幸好听晴明大人计策,多设了一层结界,以备不时之需。
【神啓荒】
「短期決戦で大蛇神を倒す。そうすれば烙印の影響を最小限に食い止められる。」
尽快与大蛇神速战速决,才好解决那印记的影响。
次々に空から落ちてきた流星が、蠢く大蛇神にぶつかり、その動きを封じ込めた。
流星陆续自空中落下,砸中大蛇神不断扭动的身体,迫使其不再动作。
——太陽の近くの空
——太阳附近的天空中
荒々しい雷鳴は鋭い刃のように、須佐之男を覆い隠す蛇の大群を切り裂いた。するとその隙間から、嵐が噴き出した。蛇の腹から尾まで、広範囲にわたって稲妻が炸裂した。まだ動いている巨蛇の心臓を掴んで現れた須佐之男は血まみれで、全身が赤く染まっていた。黒い蛇血を空に巻き上げたせいで、真っ黒な嵐になった嵐は、須佐之男を中心に駆け巡っている。一方、嵐の中心にいる彼の目は、狂気に満ちていた。漆黒の嵐は結界のように、須佐之男と人々を、未だに巨神の手の中で眠り続けている太陽を完全に隔離した。
凛冽的雷鸣如同刀锋般,将包裹着须佐之男的蛇群破开一道巨口,风暴从裂口中喷薄而出。闪电自蛇腹中一路炸裂至蛇尾,须佐之男手中握着巨蛇颤动着的内脏现身在战场,只见他浑身浴血,蛇血掩盖了他金色的光芒。那风暴围绕着他的身躯旋转,将黑色的蛇血卷起,竟化为一股黑色的风暴,而身在风暴正中央的须佐之男,双目中迸发出狂气。漆黑的风暴化为漆黑的结界,须佐之男将自身和众人彻底隔绝开来,也隔开了巨神法相手掌中尚未苏醒的太阳。
【晴明】
「須佐之男様!」
须佐之男大人!
【須佐之男】
「来るな。」
别过来。
【神啓荒】
「須佐之男、悪神を封印した時に浮かび上がった烙印は、ヤマタノロチが天羽々斬に残した印、そして君にかけた呪いだ……しかし悪神はまだ全員封印されてはいない。だからこの術は未だに完成していない。一刻も早くヤマタノロチを止めるんだ——」
须佐之男,那封印恶神所留下的烙印,正是八岐大蛇在天羽羽斩上做下的印记,也是他在你的身上所设的诅咒……但恶神还并未全部归位,这术法还没有彻底完成,此时要尽快阻止八岐大蛇——
彼が言葉を言い終わらぬうちに、須佐之男の手足にはめられた枷が壊れて空に舞い上がった。次の瞬間、それらは矢のごとくヤマタノロチめがけて飛んでいった。
他的话音未落,须佐之男四肢上的镣铐已经尽数炸裂,如箭一般地飞回了空中,朝着八岐大蛇的方向冲了过去。
【須佐之男】
「くたばれ。」
受死吧。
【神堕ロチ】
「そうとも、それこそがお前の帰結、お前の定められし結末だ。私を追いかけ、渇望し、喜ばせろ。」
没错,这才是你的归宿,这是你应有的结局。追逐我吧,渴求我吧,取悦我吧。
そう言っているうちに、すでに目の前に迫ってきた須佐之男がまっすぐに彼の首を狙う。ヤマタノロチは宙返りして攻撃をかわしたが、次は腹を蹴られ、巨神に叩きつけられた。攻撃をかわすだけでも精一杯だというのに、ヤマタノロチはむしろ楽しそうに、不敵に笑っている。まるですべてが彼の予想通りだと言わんばかりだ。須佐之男が再び近くまで迫ってきたので、ヤマタノロチは慌てて近くの蛇魔と入れ替わった。次の瞬間、蛇魔は心臓を抉り出されていた。まだ動いている蛇魔の心臓を握りつぶした須佐之男は、妙に落ち着いていて、冷たい表情をしている。
然而他话音未落,须佐之男已经来到了他的面前,直取他的脖颈。八岐大蛇一个后仰,却被一脚踢中腹部,径直撞向了法相。八岐大蛇躲避得越发吃力,然而他的笑声却更加自在而快意,透露出一切尽在掌控之中的从容。却见须佐之男又已杀至眼前,八岐大蛇急忙与近处的蛇魔调换了位置,就见蛇魔已被一爪掏心。蛇魔跳动的心脏在空中爆开,而须佐之男的表情异常冷静,双目冰冷。
【神堕ロチ】
「そう、それこそが真のお前だ。」
没错,这才是你本来的样子。
須佐之男は何度も必殺技を繰り出したが、ヤマタノロチは己に化けた蛇魔を呼び出し、蛇魔の中に紛れている本当の彼を探す須佐之男を笑みを浮かべながら見ていた。そして彼は、天照の側にやってきた。蝕まれた太陽の外殻は、もはや侵入者を拒まない。邪神はいとも容易く太陽を守る結界を突破した。ヤマタノロチは親しそうに天照に近寄ると、彼女の髪を優しく撫で始めた。
须佐之男步步杀招紧逼,八岐大蛇顺势散布蛇魔,幻化成自己的模样,含笑着观察须佐之男在迷阵中寻找自己的真身。趁此时机,他来到天照身侧,被污染后的太阳外壳不再拒绝他的闯入,邪神轻而易举地分开了太阳外侧的结界。八岐大蛇亲密地靠近天照的身体,温柔地抚摸起她的发丝。
【神堕ロチ】
「女神天照よ、眠っている時は、いつもより素直だな。今のお前は、頑なになって切り離された憐れな分身たちを拒んだり、残酷に慈悲のない判決を言い渡したり、独断で人々の選択に干渉したりしない。今、分身たちの力を感じただけなのに、お前はすぐに懐いてくれた。むしろこっちが戸惑うほどだ。ならば、私の帰還を迎える役は、お前が適任だろう。」
女神天照啊,你在睡梦中时,倒是比清醒时要直率几分。如今的你不会顽固地拒绝那些被你割离舍弃的可怜分身们,也不会冷酷地念出不近人情的判决之词,更不会以一己之私独断专行,去左右世人的选择。此时的你仅仅是感知到了分身们的力量,就变得如此亲昵,竟让我有些难以适从呢。既然如此,不如就由你来,亲自迎接我的归来吧。
天照の側にいるヤマタノロチを見た須佐之男は何も言わずに突進し、一突きで彼の心臓を抉り出した。しかしそれもまた身代わりの蛇魔だった。天照から離れたヤマタノロチが、瘴気を操り始めた。赤黒い瘴気に包み込まれた天照は、人形のようにぎこちなく動いた。
见状,须佐之男沉默着冲上前,一掌掏出了他的心脏,然而八岐大蛇的身形再度化为了一条蛇魔。八岐大蛇松开了怀中的天照,操纵起手中的瘴气,只见那黑红色的瘴气环绕着天照的身体,竟然使她如同木偶般机械地动作了起来。
【神堕ロチ】
「決死の思いで彼女を救おうとしているのに、肝心の本人は感謝することもなく、いつまで経っても目覚めない。一方、高天原の殺戮の刃たるお前は、天照のために処刑を行っている。しかしその殺業は、いずれお前の罪となる。自分だけは異なる結末を迎えると、一体なぜそう思う?」
看来你抱着必死的决心想要救她,她却迟迟不肯醒来,并不领你的情。而作为高天原的杀戮之剑,你为天照处刑,如今杀孽却归于你,你究竟为何会觉得,你能得到不同的结局?
【須佐之男】
「王の気高さは、選択によって決まる。俺の結末は、俺が決める。もし俺が己の殺業によって堕神になるとしたら、ヤマタノロチ、お前の堕落は、節操なく罪人を許すことにある、お前自身も含んでな。」
王的高度在于取舍,我的结局也只由我自己决定。若我是因自己的杀孽而化为堕神,八岐大蛇,你的堕落,就在于你毫无节制地宽恕罪人,包括你自己。
【神堕ロチ】
「実に面白い。お前は天照を守るためだと言い張るが、前にも言ったように、お前と私は似た者同士だ。お前は仕えるべき神を、歩むべき道を間違えた。私が正しい道へと導いてやる。お前は思う存分処刑し、断罪するがいい。今、私は最高に滾っている。この痛快この上ない気持ちは、お前にも伝わったか?私のように、身も心も自由になれたか?」
有趣,你口口声声说着是为守护天照,可我早就说过,你我才是一样的人,你选错了该效忠的神,也选错了该走的路。如今我将你引回正途,你只管尽情处刑,尽情断罪。现在的我,是无比的快意,你是否也感到了这份快意?是否也和我一样,从身到心,都一并重获自由?
無数の漆黒の稲妻が夜空を切り裂いた。大気をも揺るがす雷鳴は、世界を滅ぼそうとしているかのように荒々しい。稲妻は一度にすべての蛇魔を呑み込んだ。黒焦げの死体が次から次へと地面に落ちていく。
无数漆黑的闪电自夜空坠落,其雷鸣有如万马奔腾般壮观,仿佛要将一个世界彻底踏为平地般气势磅礴。闪电一并击中了所有蛇魔,焦黑的尸体接二连地从空中坠落下去。
【神堕ロチ】
「お前は何度も見ただろう?私が世界を滅ぼし、天照を殺し、お前の愛する人々を最も憎い存在に変えるのを。それでも言い切れるのか?お前は私に殺意を抱いていない、殺業に溺れてはいないと。お前の行いはすべて、人々のためだと言い切れるのか?そうやって、お前の罪を、人々に押し付ける気か?」
一次次地目睹世界毁于我手,天照因我陨落,目睹你钟爱的世人是如何在我手中,化为你最为痛恨的模样。即使如此,你却还要声称,你对我,没有杀意,也没有杀孽,你的所作所为,不过是为了世人。你想要由此,将你的罪孽,推卸给世人吗?
それを聞いた須佐之男は、ただ冷たい表情で彼を睨みつけるだけで、質問に急いで答えようとはしなかった。彼の背後では、金色の目を持つ巨神が太陽越しに、冷静にヤマタノロチを見つめている。
闻言,须佐之男只是冷冷地看着他,仿佛并不急着回答他的质问。在他的身后,巨神法金色的双目透过太阳,平静地望向八岐大蛇的方向。
【須佐之男】
「もし俺が殺戮に溺れたら、それは殺戮に溺れたかったからだ。故に、人々に罪はない。罪は俺にある。」
我若开杀戒,是因为我想开杀戒。因此,世人无罪,罪责在我。
荒ぶる雷霆の中、力が無限に湧いてくる須佐之男は、漆黒の嵐を操り平安京の上空を席巻した。空を切り裂く黒い稲妻が、空中に巨大な割れ目をいくつも残した。赤黒い雷槍が空高く舞い上がり、彼の手の中に戻った。振動しながら行き来する天羽々斬は、命令を待つ血に飢えた獣のようだ。
狂烈的雷暴之中,须佐之男的力量如同洪水般溢出,漆黑的风暴席卷了整个平安京的上空,紫黑色的雷电将天空劈开数道万丈沟壑。黑红色的雷枪飞上云端,回到了他的手中,天羽羽斩们震动着徘徊着,如同嗜血的野兽等待着扑食的讯号。
【神堕ロチ】
「さっきお前に追いかけられている間、お前は自分こそがこの場を支配していて、私は逃げ惑うことしかできないのだと思っていただろうが、お前が引き起こした嵐のおかげで、私は太陽を蝕む血霧結界を設置することができた。これほど広い範囲に血の霧を散布できたのは、須佐之男、全部お前の自惚れのおかげだ。」
刚才你我二人追逐之中,你自以为占了上风,将我围追堵截,但掀起的风暴,正好为我散布了血雾结界,以此污染太阳。这血雾能够如此宽广,须佐之男,可真是多谢了你的自负。
【須佐之男】
「ふん、結界だろうが、血の霧だろうが——ぶち壊すまでだ!」
无妨,结界也好,血雾也罢——那我便劈散它!
言ったそばから、雷雲を従えた強風が吹き出した。血の霧に触れた瞬間、風は雷鳴を轟かし、すぐさま暴雨を召喚して血の霧を洗い落とした。一方、須佐之男は右手で突然槍を掲げると、容赦なく傷だらけの左腕を貫いた。堕神の力に侵された左肩甲骨が砕ける。須佐之男は槍を回して左腕の半分の骨を抉り出すと、腐血が体外に流れ出た。槍から振り落とされた腐血は、ようやく元の金色に戻っていた。
言罢,空中狂风卷着乌云遮蔽天日,两云相会,顿时雷声滚滚,不多一时便暴雨倾盆,将血雾打落。而须佐之男突然高举右手的长枪,狠狠刺穿了伤痕累累的左臂。被堕神之力侵蚀的左肩骨顿时碎裂,枪刃一转,就被直直地剔除,腐血自左肩落下,徒留半段残骨。枪刃一甩,散落遍地腐血,露出原本的金色。
【須佐之男】
「これは霧ではなく、俺にかけた呪いを加速させる毒だ。ここには結界も設置されてないし、霧もお前がよく使う目眩ましの術にすぎない。本当の狙いは、俺にかけた呪いをごまかすことだろう。」
这不是雾,而是加深我身上诅咒的毒,此地并没有什么结界,放出的雾也不过是你惯用的障眼法。你真实的目的,是为了掩盖在我身上留下的诅咒。
毒霧が晴れた瞬間、雷雲もまた消えた。槍を構えた須佐之男は、まっすぐにヤマタノロチを見つめている。そして金色の巨神も再び太陽を高く掲げ、両手で太陽を守っている。
毒雾顿时散去,雷云消散露出天空,须佐之男手执长枪,直视着眼前的八岐大蛇。而金色的巨神法相也重新将太阳托起,护在双臂中。
【神堕ロチ】
「残念だ。もう少しで、お前は呪いに乗っ取られ、その手で太陽を撃ち落とし、太陽の女神と共に落ちるところだった。何度も情けをかけてやっているのに、その都度拒絶するのだな。」
可惜了,只需再一会,你便会被诅咒侵蚀,亲手把太阳摧毁,和太阳女神一同陨落。我次次为你留了慈悲,你却总是不领情。
【須佐之男】
「お前はよく言ってたな、この世で最も称賛に値するのは命のあがきに他ならないと。なのに、俺の話になると、そのあがきすらも見届けてくれないのか?」
你过去常言,世间最值得称赞的是生命的挣扎。怎么,难道到了我这里,却连我的抗争,都不敢看到最后吗?
【神堕ロチ】
「命は儚きもので、同時に変化に富んでいる。ただし、お前は違う。どうしても見届けてほしいなら、最後の情けをかけ、お前に答えを示そう。」
生命转瞬即逝,但变数层出不穷,你却不然。既然你执意要我看到底,那我便用最后的一点慈悲,来帮你找到答案吧。
【須佐之男】
「よく言ってくれた。俺が探し求める答えは、すぐ目の前にある。それは人の世のために抗い続ける神、そして互いのために尽くす人々だ。彼らは俺の戦士であり、俺の友人でもある。いつも世界を救うのは、その世界の住民に他ならない。彼らを見つけた俺はもう、見失うことはない。」
你说的不错,我寻找的答案,确实就在我的眼前。那就是同样为人世而抗争的神明,同样为彼此而奉献的世人。他们是我的战士,我的友人,真正拯救每一个世界的,正是每一个世界的住人。我已找到了他们,我不会错过他们。
ヤマタノロチが蛇の大群を呼び出すと、須佐之男は稲妻を召喚した。血の海から空に昇る蛇の大群と、空から落ちる稲妻が途中でぶつかって激突する。黒い妖気と金色の神力が炸裂し、血しぶきが飛び散る。血しぶきを踏み台にして、須佐之男が素早くヤマタノロチに迫っていく。次の瞬間、蛇神は短剣で攻撃を受け止め、袖の中にいる蛇魔を雷槍に絡ませた。須佐之男が躊躇った瞬間、ヤマタノロチが上から剣を振り下ろしたが、須佐之男はすかさず雷槍を手放して攻撃をかわした。ヤマタノロチは畳み掛けるように次の攻撃を発動し、数匹の蛇をけしかけて敵の両足に絡ませた。敵の動きが止まった一瞬を狙い、ヤマタノロチは首をめがけて剣を振るった。しかし攻撃が当たるより先に、腹部に激痛が走った。拘束から逃れ須佐之男の召喚に応えた雷槍が、背後から彼の体を貫いていた。状況を確認するなり、ヤマタノロチは後ずさって雷槍から逃れようとしたが、須佐之男は機を逃さずに詰め寄ってきた。
八岐大蛇放出蛇群,须佐之男则召唤闪电,血海中涌向空中的群蛇和云层中劈向地面的闪电在半空相遇,黑色妖气和金色神力一并炸裂出一朵朵血花。须佐之男脚踏绽放的血花,一路追至八岐大蛇面前,蛇神继而以短剑挡下迎面一击,继而从袖中放出数条蛇魔,缠上雷枪。在须佐之男迟疑之际,八岐大蛇自上而下一剑刺来,须佐之男松开雷枪躲过,八岐大蛇则步步紧逼,数只长蛇突然飞出缠住了须佐之男的双腿。八岐大蛇趁他无法动弹,迎面一剑刺向要害,然而剑峰未到脖颈,却腹部一冷,只见雷枪挣脱束缚被须佐之男召来,从身后刺穿了他的身体。见状,八岐大蛇后退想要脱离那雷枪,然而须佐之男步步紧逼,跟着他后退。
【神堕ロチ】
「お前……」
你……
【須佐之男】
「今度こそ、逃さない。」
这一回,绝不会再让你逃脱。
——破壊された舞台の下
——破碎的舞台之下
朧車から降り注ぐ狐火や妖火、神火、孔雀羽が、大蛇神の動きをすべて封じ込めた。
狐火,妖火,神火,和孔雀羽陆续自胧车上落下,压制住大蛇神的动作。
【孔雀明王】
「一人目の悪神に勝った私に、他の悪神に負ける理由はない。孔雀の国の力を、今こそ見せてあげる。」
我能战胜一个恶神,自然也能战胜另一个,就让你们看看我孔雀国的力量。
【鈴彦姫】
「あたしの七支刀を蛇に汚させはしないよ!」
我的七支刀可不能由着那破蛇弄脏!
根を下ろした蓮が、人知れずに巨蛇の体に絡みつく。時を同じくして、脆そうだがとても強靭な赤い糸も巨蛇に絡みついた。
莲花的根茎悄然爬上巨蛇的身躯,与此同时爬上来的还有一条条看起来脆弱却异常有韧性的红绳。
【帝釈天】
「それは……」
这是……
【縁結神】
「大したものではないのじゃがな、気に入ったのなら買うこともできるぞ。これは独身の者や記憶を失った者によく効く赤い糸じゃ。」
献丑了献丑了,这位贵客我看你有缘,临走要不要买两条回去,我这红绳对单身和失忆有奇效。
【孔雀明王】
「どうやら今日の舞は、まだまだ終わらないようね。」
看来今天这场舞,还远没有到该落幕的时候。
二人の足元では、妖火、神火、狐火、三色の炎が燃え盛っている。そして蓮、赤い糸、血肉の欠片、様々な物が二人の周りに転がっている。
妖火,神火,狐火,三色烈焰燃烧在二人脚下,莲花,红绳,血肉之花,虚虚实实绽放在二人脚边。
【孔雀明王】
「みんな、もう一度道を切り開いて!」
诸位,请再为我们二人开路!
【鈴彦姫】
「みんな、もう一度音楽を奏でて!」
诸位,请再为我们二人奏乐!
朧車に乗った妖怪たちが祈祷の舞の旋律に合わせて陣太鼓を打ち鳴らし、大妖怪たちに続いて蘇った大蛇神に向かっていく。陰陽師たちも呪文を唱え、何度も結界を強化する。二人の目の前で巨蛇が顔を高く上げると、次の瞬間には皆の攻撃を喰らっていた。人々の頭上、激戦を繰り広げる須佐之男とヤマタノロチの頭上、雲の上にいる巨神の頭上、その高く掲げる腕の中で眠っている太陽は、眩しい光を放っている——
胧车上的妖怪们击起战鼓,在一众大妖们的带领下朝着复苏的大蛇神进发,有如神舞的鼓点。阴阳师们纷纷念起咒语,一遍又一遍地加固着结界。在二人面前,巨蛇扬起了它的头颅,迎接它的是众人的攻击。而在众人的头顶,也在缠斗的须佐之男和八岐大蛇的头顶,高天之上巨神法相的头顶,在他那高举的手掌之中……沉眠的太阳,迸发出了耀眼的光芒——
【鈴彦姫&孔雀明王】
「神様、どうか私たちの祈りを聞いてください!これは大空の歌、大地の吐息。神の民が、神の帰還を求める祈り!」
神明啊,请你聆听我们的祈愿!这声音是高天的云歌,是大地的吐息,是你的子民,在呼唤你归来的声音!