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70、祈神之宴 ⑧ ...

  •   数日後、平安京には祈念の力が満ち、特別な祈りの力が流れていた。ここ数日城を守っていた兵士と陰陽師たちは不思議な力に癒やされ、疲れも不安も吹き飛んだ。

      几日后,祈愿之力充满了平安京,城中四处流淌着奇特的愿力。守城数日的将士和阴阳师们,有如被神力润泽般,不再觉得不安和疲惫。

      【源氏の武士】

      「家族が俺たちを待っている。」

      亲人一定还在等着我们归家的消息。

      【賀茂の陰陽師】

      「もうすぐだ、必ずまた会える。」

      快了,一定会再见面的。

      平安京の中心にある舞台は飾り直され、祭りに参加していた舞姫と式神も全員出て行き、演奏者も全員入れ替わった。須佐之男と荒は幻術を使って人混みに紛れている。舞台の上で、数日間にわたって踊り続けた二人の神女は、疲れるどころか一層元気になっていた。

      平安京正中的舞台已重新布置,原本庆典上的舞姬和式神们已被护送离开,击鼓奏乐的人也换了一批。须佐之男和荒以幻术隐藏在人群中。舞台上,连舞数日的两位神女不见疲色,而是神采奕奕。

      【孔雀明王】

      「これだけたくさん祈念の力が集まるなんて、太陽の女神は大人気のようね。これから、祈念の力を太陽の中に注ぎ込む。」

      居然聚集了这样充沛的祈愿之力,看来这位太阳女神深受大家的爱戴。接下来要做的,就是把这力量注入太阳之中了。

      【鈴彦姫】

      「孔雀ちゃん、ここからが本番だ。準備はいい?」

      小孔雀,从现在起就要动真格了,你准备好了?

      【孔雀明王】

      「もちろんよ。そっちこそ、目が回って私の尾羽を踏んだりしないように気をつけてね。」

      当然,倒是你可要撑住,别中途转晕踩了我的尾羽。

      【鈴彦姫】

      「あはは、心配いらないよ。例え目が回っても、あんたの尾羽を傷つけるようなへまはしない!」

      哈哈哈放心,我就是转晕了,也不会烧着你的尾巴的!

      鼓の音が再び鳴り響く時、二人は本番の祈祷の舞を踊り始めた。舞と共に、溢れる祈念の力が舞台の中央に押し寄せてくる。炎を裾に纏った鈴彦姫と尾羽を光らせた孔雀明王が、二人同時に神楽鈴を掲げる——

      鼓声重新响起,二人跳起正式的祈神舞,随着舞步,弥漫的祈愿之力如瀑般涌向舞场正中。铃彦姬的舞裙现出火焰,孔雀明王的尾羽迸发光芒,二人举起神乐铃挥出—

      集いし祈念の力が太陽に注ぎ込まれ、人々は眩しい光に包み込まれた。太陽の薄い外殻ごしに、眠る女神の姿が見える。

      汇聚的祈愿之力冲入太阳,耀眼的光芒笼罩了所有人,只见太阳那薄薄的外壳之中,显露出一位女神沉睡的身姿。

      【須佐之男】

      「(天照様は、数千年の間、一度も離れなかった。)みんな下がれ、空中に何か現れた!」

      (天照大人,这数千年来,你一直都不曾离开。)诸位退后,空中有东西袭来了!

      【神啓荒】

      「結界を強化し、舞台を守れ。」

      加固结界,保护舞台。

      眩しい光が収まると、数十匹の黒い巨蛇が空から落ちてきた。巨蛇は激しく舞台にぶつかったかと思うと、周囲から襲ってきた。舞台は一瞬にして蛇の群れに囲まれた。

      强光散去,从天而降的竟是数十条黑色的巨蛇。巨蛇用力撞向舞台,朝着四面八方袭来,顿时四处皆是蛇群。

      【神啓荒】

      「星羅雲布!」

      幻境結界を展開した荒が、星海で舞台を囲む。幻境に隠れていた源氏の鬼兵部も同時に現れて刀を振り下ろし、敵に無数の傷を負わせて巨蛇を撃退した。

      幻术之下显露出荒的结界幻境,星海将舞场层层包围。本被幻境掩盖的源氏鬼兵部随之显现,挥刀斩向巨蛇,将其击退,一时间毒血四溅。

      【源頼光】

      「おや?蛇の毒血が土を侵食している。さては地下から結界を突破する魂胆だな。」

      哦?这毒血在入侵土壤,是想从地下突破结界。

      【八百比丘尼】

      「ふふ、地下まで結界を広げなければならないようですね。」

      呵呵,看起来需要把结界延伸到地下了。

      【晴明】

      「博雅、三本の矢で術陣を地下に打ち込め!神楽、地下にも結界を展開するぞ!」

      博雅,用诛邪箭把法阵打入地下!神乐,我们将结界的边界向地下延伸!

      それを聞いた源博雅は高台に跳び上がると弓を構えた。矢をつがえ、結界の楔を土の中に打ち込む。しかし蛇の群れはまだ強化されていない反対側に押しかけ、素早く地下に潜り込んだ。

      博雅闻言跳上高台,搭弓指向舞台四角,两箭齐发将结界的界桩打入地下十寸有余。然而群蛇却冲向尚未加固的另一侧,争先恐后地钻入地底。

      【源博雅】

      「神楽、晴明!あっちは任せるぞ!」

      神乐,晴明!压住另一边!

      【御饌津】

      「私に任せて!」

      让我来!

      次の瞬間、御饌津が放った破魔の矢が風を切り、反対側の楔も舞台の地下に打ち込まれた。土を侵食した毒血が、舞台の真ん中の隙間から湧いてくる。瞬く間に、舞台は毒蛇がひしめく地獄になった。しかし二人の舞姫は驚く様子もなく、毒蛇に囲まれても舞を続けている。

      话音刚落,御馔津的破魔箭划开天际,将另一侧的界桩也打入了舞台地下。毒血深入土壤,从舞台正中心的缝隙中喷薄而出,转眼间舞台上遍布毒蛇,两位舞姬临危不乱,依然在蛇群中穿行起舞。

      【孔雀明王】

      「鈴彦姫、火を!」

      铃彦姬,引火!

      尾羽を広げた孔雀明王は、無数の毒針を放ち、毒蛇を釘付けにした。

      孔雀明王的尾羽展开,如毒针般四下射去,将毒蛇插在原地。

      【鈴彦姫】

      「しっかり掴んで!飛ぶよ!」

      抓好!起跳!

      二人は互いを掴んだまま、空を舞う鳥のように高く昇っていく。二人の足元に出現した神火が、毒蛇を灰に変えた。祈念の力が二人の腕を伝って太陽に注ぎ込まれていく。突然、まだ死に絶えていなかった蛇の群れが跳び上がり、祈念の力の奔流に汚れた堕落の力を混入させると、そのまま天照に飛んでいった。

      二人一前一后,拉住彼此回旋向上,如两只飞天的神鸟般难舍难分。神火在二人脚下燃起,将毒蛇烧为灰烬,祈愿之力顺着二人高举的手臂朝太阳飞去。突然,一息尚存的蛇群竟跳入光流,将污秽的堕化之力掺入其中,一并朝天照飞去。

      【神啓荒】

      「させるか。」

      休想。

      光の奔流よりも速い星々が、空から蛇の群れを撃ち落とした。しかしその瞬間、人の顔を持つ巨蛇が突如現れ、光の奔流を一口で呑み込んだ。それでは飽き足らないと言わんばかりに、すぐさま他の祈念の力の奔流を追いかけていく。

      星辰比光流更快,将蛇群打落天际。然而就在这时,一条人面巨蛇横空出世,一口将光流火焰吞噬,紧接着又朝着更多的光流追去。

      【神啓荒】

      「大蛇神。」

      【晴明】

      「大蛇神はもう討伐したはず、なぜまた現れた?これは幻術か?」

      但我们分明已讨伐过它,怎么会又出现在这里?难道是幻术吗?

      【燼天玉藻前】

      「幻術かどうか、試せばすぐ分かる。」

      是不是幻术,一探便知。

      【晴明】

      「玉藻前?お前も来たのか。」

      玉藻前?你来了。

      【燼天玉藻前】

      「晴明、私は賀茂家から便りを受け取ったのだ。ふん、私の逢魔の原に手を出す者は、討ち果たすまでだ。」

      晴明,我收到了贺茂家的信。呵,扰我逢魔之原,我将讨伐到底。

      玉藻前の背後に数台の朧車が現れた。大妖怪たちが朧車に飛び乗り、迅雷のごとく大蛇神を追いかける。しかしまっすぐに太陽に向かい、目標に巻き付いた大蛇神は、太陽を絞め殺そうとした。眠っている天照は辛そうな様子で、無意識にあがき始めたが、やがてその純白の姿は蛇の影に覆い隠された。

      数辆胧车出现在玉藻前身后,几位大妖纷纷跳上车,风驰电掣般地追向大蛇神的方向。然而大蛇神径直朝着太阳的方向飞去,层层缠绕上太阳,收紧蛇腹。沉睡的天照无意识地挣扎起来,似是十分痛苦,洁白的身体被蛇影包裹。

      【神堕ロチ】

      「私をもてなすために、これほど豪勢な宴を用意したのか?」

      诸位今日的阵仗,可是特意来欢迎我的?

      ついに巨蛇の頭上に降り立ったヤマタノロチが、一同を見下ろす。

      八岐大蛇终于降临在巨蛇的头顶,居高临下地俯瞰着众人。

      【神堕ロチ】

      「しかし、やはり何か物足りないな?」

      只是这欢迎,好像少了点什么?

      次の瞬間、雷鳴が轟き、荒ぶる稲妻が大蛇神の頭に向かって落ちてきた。それを見たヤマタノロチは愉快そうに微笑むと、蛇魔を短剣に変えて、正面から稲妻を迎撃した。

      言罢,空中雷鸣大作,一道狂烈的雷暴直直朝着大蛇神的头顶劈来。八岐大蛇见状顿时露出笑容,手中的蛇魔一挥化为短剑,迎面接上了这道惊雷。

      【須佐之男】

      「ヤマタノロチ。」

      八岐大蛇。

      【神堕ロチ】

      「須佐之男。」

      瞬く間に、雷撃を食らった大蛇神は体勢を崩し、倒れそうになった。しびれた巨蛇はついに太陽を解放し、雲の上から舞台の近くに落ちた。その瞬間、大地をも揺るがす激震が起きた。太陽の中にいる天照はようやく巨蛇の魔の手から解放され、穏やかな眠りを取り戻した。須佐之男が心配そうに地面を見やる。一方で、赤黒い瘴気を漂わせたヤマタノロチが、未知の力を操り須佐之男に襲いかかる。

      瞬时间,被雷暴击中的大蛇神失去平衡,摇摇欲坠。巨蛇因电流的刺激终于松开太阳,跌落云端,重重地落在了舞台之下,一时间天摇地动。太阳中的天照不再受蛇群侵扰,重新恢复安眠。须佐之男担忧地望向地面,而八岐大蛇周身散发出黑红瘴气,一股诡异力量向须佐之男袭来。

      【須佐之男】

      「今度はどこの神を味方につけたんだ?」

      这一回,你的盟友又是何方神圣?

      【神堕ロチ】

      「味方だと?下にいるあれのことか?」

      盟友?你是说,下面那个吗?

      地面に倒れ込んだ大蛇神の、高く盛り上がった腹の部分が突然蠢き始めた。しばらくして、不気味で青い巨蠍がその鋏で蛇の腹を切り裂いて現れた——

      只见大蛇神庞大的身躯瘫倒在地,它隆起的腹部突然蠕动起来。片刻后,一只巨钳从中破腹而出,蛇腹中竟爬出了一只诡异的蓝色巨蝎——

      【神啓荒】

      「あれは、色欲の悪神……」

      这是,色欲恶神…

      蠍が蛇の腹の中からゆっくりと這い出てきた。しかし全体像が見えたその時、その尾は毒針ではなく、両足を切断された白衣の女であることがわかった。両足を切断された傷だらけの女は、もはや巨蠍の一部となり、恐ろしい怪物と化していた。

      毒蝎的身体逐渐从蛇腹中显出,然而最后露出的尾部不是毒针,而是一个双腿被切断的白衣女人。女人浑身残破,被切断的腿部已和巨蝎融为一体,化为了恐怖的怪物。

      【孔雀明王】

      「……!姉様!」

      ……!姐姐!

      【神堕ロチ】

      「我が愛しい悪神たちは、その意志とは関係なく、皆我が手中にある。しかしお前たちの舞姫は……感動的な再会を果たした今、いつまでお前たちの舞に付き合ってくれるだろうか?」

      我可爱的恶神们,听话也好不听话也罢,都是我的囊中之物,而至于你们的舞姬……在如此感人肺腑的重逢后,又还会陪你们舞到几时呢?

      【須佐之男】

      「蛇神、相変わらず悪趣味だな。」

      蛇神,你的恶趣味真是一成不变。

      【神堕ロチ】

      「奇遇だな、処刑人のお前も全然変わっていないぞ。」

      真巧,你这行刑人也是一如既往。

      二人は空の上で激戦を繰り広げている。須佐之男の雷槍が何度もヤマタノロチの胸を切り裂きそうになる。一方、ヤマタノロチは攻撃をかわしながら力を集めている。赤黒い瘴気を手の中に集中させると、彼は突然地面を指差した。瞬く間に、空をも覆い隠す蛇魔の大群が、地上にいる人々を襲い始めた。危機一髪で須佐之男が急降下し、雷霆の盾を呼び出して皆を守る結界を展開した。蛇魔はすぐさま彼に矛先を向けた。

      二人在云端上缠斗开来,须佐之男的雷枪屡屡划过八岐大蛇的胸前。只见八岐大蛇一边避让,一边凝聚力量,黑红色的瘴气汇聚在他手中,却见他手指一转,指向地面。顿时,铺天盖地的蛇魔,朝着地面上的众人袭来。情急之下,须佐之男俯冲向地,召唤雷暴化为雷盾,张开结界为众人抵挡,蛇魔立刻向他袭来。

      【神堕ロチ】

      「他人を助ける前に、まずは自分の身の安全を守るべきではないのか?」

      想救别人,不如先救你自己如何?

      須佐之男は稲妻のように眩しい光を放つと、一瞬にして周囲の蛇魔を灰に変えた。

      须佐之男的身体迸发出闪电般的光芒,转瞬之间便把周身的蛇魔烧为灰烬。

      【須佐之男】

      「ヤマタノロチ、お前は本当に度し難いやつだ。」

      八岐大蛇,你真是无可救药。

      それを聞いて、ヤマタノロチは笑った。黒い堕落の力が天照を包み込んだせいで、太陽の光は消える寸前の蝋燭のように暗くなっていく。

      闻言,八岐大蛇笑了,只见紫黑色的堕化之力已经将天照层层缠住,太阳的光芒如烛火般明明灭灭。

      【神堕ロチ】

      「度し難い者なら、他にいると思うが。」

      我倒觉得无可救药的,另有其人呢。

      ——破損した舞台の下

      ——破损的舞台之下

      皆は撤退を始めたが、孔雀明王だけはどうしても舞台を離れようとしない。

      众人已经纷纷撤离,只有孔雀明王不肯离开舞台。

      【鈴彦姫】

      「早く行くよ、孔雀ちゃん。あれはもうあんたの姉様じゃない!」

      快走,小孔雀,那已经不是你的姐姐了!

      【孔雀明王】

      「姉様、目を覚まして!私、私よ!」

      姐姐,你醒一醒,是我、是我啊!

      【白孔雀】

      「この声……あなたは……青、愛しい青、会いたかった……ずっと、もう一度会いたかった……もう一度踊りたい、一緒に暮らしたい……」

      这个声音…你是……青,我的小青,姐姐好想你……我一直好想再见你一面……再和你一起跳舞,一起生活,一起……

      そう口にした白の女王の目が、うつろになっていく。何か思いついたようで、蛇に囲まれながら、巨蠍を操って踊り始めた。その舞はとても美しかった。思わず息を殺したくなるほどの悲しい美しさは、永遠に失われた過去を偲んでいるようだ。

      说到这里,白女王的目光变得迷离,仿佛在思念着什么,她竟在蛇海之上操纵着巨蝎翩翩起舞。那舞姿美得令人屏息,是令人心痛的凄美,仿佛在悼念着已永远失去的过往。

      【賀茂の陰陽師】

      「美しい……」

      太美了……

      【藤原陰陽師】

      「も、もう少し近づきたい……」

      我、我好想距离她再近一些……

      惑わされた陰陽師たちが、次から次へと蛇の大群の中に踏み入れていく。蛇の大群は間髪入れずに彼らに食らいついた。

      受到蛊惑的阴阳师陆续踏入蛇海,顿时就被蛇群缠绕啃食。

      【孔雀明王】

      姐姐,你这是做什么?

      【白孔雀】

      「一緒に帰りたかった、一緒に踊りたかった。一番の願いは、あなたと一緒に——」

      我多么想和你一起回去,多么想再和你一起跳舞,可是我更想和你一起——

      白孔雀は目から紫色の光を放ち、恐ろしい笑顔を浮かべる。

      白孔雀的眼中迸发出紫色的光芒,笑容也随之变得狰狞。

      【白孔雀】

      「——私たちをいたぶり、裏切る者を皆殺しにしたい!」

      —杀光世上所有欺我们,负我们的人!

      孔雀明王が呆気に取られた瞬間、ようやく会えた姉は突然彼女に向かって毒針を放った。

      孔雀明王一愣,却见久别重逢的姐姐突然朝自己射出毒针。

      【晴明】

      「孔雀明王様!」

      孔雀明王大人!

      【鈴彦姫】

      「孔雀ちゃん、危ない!」

      小孔雀,小心!

      追い詰められた孔雀明王が羽を飛ばして迎撃しようとした時、突然出現した闇がすべてを呑み込んだ。

      孔雀明王情急之下射出羽毛欲迎战,然而就在这时,黑暗骤然降临吞没了一切。

      気がつくと、彼女は蓮でできた船の上にいた。

      回过神时,她已在一朵莲花形成的扁舟之上。

      【帝釈天】

      「白の女王は幻術に長けている。あの場にいた陰陽師たちを魅了しただけでなく、彼女と色欲の悪神の姿を隠すために光をも遮断した。そこで、私は幻術の中にもう一つの幻境を作った。こうすれば、私たちには彼女が見えないが、同時に彼女も私たちを見つけられない。しかしいつまでも通じる手ではない。なぜならば——」

      白女王幻术了得,不仅魅惑了在场的阴阳师,还遮蔽了所有的光亮,让人难以寻到她和色欲恶神的踪影。我便在幻术里又套了一层幻术,这样一来我们虽看不见她,她也一时无法找到我们的所在。但这不是长久之计,毕竟——

      その時、千本以上の毒針が正面から二人を襲ってきた。攻撃を受けて、蓮の船は闇の中に消えた。帝釈天が幻境を維持している間に、孔雀明王は毒針を放って敵の毒針を撃ち落とした。しかし攻撃を防ぎきれなかったせいで一撃を食らってしまった。

      就在这时,万箭齐发的毒针从正面朝着二人射来,莲花的扁舟中针消失在黑暗里。帝释天抬手维持幻境,孔雀明王则同时射出毒针,堪堪将对方的毒针击落,却仍旧是中了一针。

      【孔雀明王】

      「敵の攻撃範囲が広すぎる。方向がわからなくても、当てることができてしまう。私も同じ技を使えるけれど、闇の中には幻術に惑わされた人々がいる。こんな卑怯な手、姉様が使うはずはないのに……」

      毕竟对方的攻击范围太广了,就算找不准方向,也可以歪打正着。我虽能使出同样的招数,但这黑暗的幻境中还沉睡着被幻术蛊惑的无辜之人。这卑鄙的做法,怎么想也不该是出自姐姐之手…

      【帝釈天】

      「悪神は卑怯だからな。やめる気がないようなら、一旦勝たせてやろう。」

      恶神行事卑鄙,既然他不肯停手,我们就让他得逞一时。

      闇雲に放たれた毒針がありとあらゆる方向から襲いかかる。闇の中に出現したいくつもの蓮が、毒針攻撃を受けて転がる死体に姿を変える。二人が乗っていた蓮の船も、血だまりの中に倒れる孔雀明王の姿になった。それを目にした悪神は、予想通り攻撃を中止した。闇の中で正体を現した悪神が、黙って死体に近寄ってくる。時を同じくして、幻境に巻き込まれた人々も次々と蓮の幻影の下から這い出してきた。帝釈天は彼らの気配を隠し、白蓮で導いている。

      毒针毫无章法地自四面八方袭来,黑暗生出朵朵莲花,中针之后化为一具具尸体倒在地上。二人脚下的莲舟也化为孔雀明王的样子,倒在了血泊之中。恶神见状果然停止了攻击,于黑暗中显露真身,沉默地朝着尸体而来。与此同时,被卷入幻境中的其他人陆续从莲花的幻像之下爬出,帝释天抹去了他们的气息,以白莲点亮了道路。

      【帝釈天】

      「先に幻境を脱出するんだ、悪神は私に任せてくれ。」

      诸位先逃出幻境,我来拦住恶神。

      意外なことに、孔雀明王の死体を目にした白の女王は突然苦しそうにもがき始めた。まるで狂ったかのように、巨蠍の尾から自分自身を切り落とそうとしている。

      然而,看到孔雀明王尸体的白女王突然痛苦地扭动起来,发狂般地想将自己的身体撕离巨蝎尾部。

      【白孔雀】

      「いや……いやだ、離せ、悪魔め!死になさい……全員死になさい!」

      不……不,放开我,你这恶魔!去死吧……你们全都去死!

      気が狂った白孔雀は、何の兆しもなく突然幻境の構造を変えた。周囲の空間が崩壊し、中心へと圧縮されていく。巨蠍も闇雲に毒針を射出し始めた。撤退する人々が巻き込まれる寸前で、帝釈天はすかさず霊神体を呼び出し崩壊していく幻境を支えた。

      发狂的白孔雀毫无征兆地变幻幻境的构造,四周的空间如同吃人的巨口般不断向中心坍塌,巨蝎同样胡乱射出毒针。眼看就要波及来不及撤出的人,帝释天立刻召唤灵神体支撑住了坍塌中的幻境。

      【孔雀明王】

      「こっちよ!」

      快跟我来!

      【帝釈天】

      「これは……」

      这是…

      間一髪で突然幻境に現れた一本の真っ黒な触手が、二人を庇って毒針攻撃を受け止めた。

      危急之下,一条漆黑的触手突然自幻境中生出,将二人层层裹住挡下了毒针。

      【孔雀明王】

      「敵か味方か?」

      是敌是友?

      【帝釈天】

      「……味方だ。」

      ……是友。

      【神啓荒】

      「しっかり掴め。」

      抓紧。

      次の瞬間、星海が闇を切り裂き、悪神の幻境を完全に破壊した。星々が夜空を、闇の最果てで踊る白の女王を照らした。

      紧接着,星海冲破黑暗,将恶神的幻境彻底撕碎,点点星光点亮了夜空,同时也照亮了在黑暗尽头翩翩起舞的白女王。

      【神啓荒】

      「今だ。」

      趁现在。

      【孔雀明王】

      「私の羽を追って!」

      追上我的羽毛!

      【神啓荒】

      「隕星!」

      孔雀明王が巨蠍に向かって鋭い尾羽を放った。尾羽に追いつくと、流星は尾羽と一つになり、浄化の神力が宿る毒針となった。浄化の力を持つ毒針は敵の関節の隙間に当たり、そのまま外殻を貫いた。次の瞬間、毒針は次々に巨蠍の体内で爆発した。体の中からの攻撃を受けた巨蠍は、苦しそうにもだえ始めた。同時に尾の部分にいる白孔雀も苦しそうに眉をひそめた。

      只见,孔雀明王朝着巨蝎射出尖利的尾羽,流星追上那尾羽,二者在星海中合二为一,化为燃烧着净化神力的毒针。带有净化之力的毒针射入了关节的缝隙处,刺穿了巨蝎的外壳,在它的体内一个接一个地引爆。巨蝎腹背受敌,痛苦地蜷缩起来,而尾部的白孔雀竟也同样痛苦万分。

      【白孔雀】

      「青、青……どうしてこんなことを?あなたも彼らと同じなの?まさかあなたも、私が国を裏切った悪女だと信じているの?」

      小青,小青……你为什么要这么对我?难道你也和他们一样吗?难道,你也相信,我就是那叛国的妖女吗?

      泣き崩れる白の女王を前にして、孔雀明王は戸惑った。

      面对白女王的啜泣,孔雀明王迟疑了。

      【孔雀明王】

      「違う……彼らの話なんて、私は一度も信じなかった。」

      不是的…我自始至终,都不曾相信过他们的话。

      【神啓荒】

      「危ない。」

      小心。

      巨蠍は幻境のあちこちに毒針を仕込んでいた。白の女王が泣き崩れたその瞬間、毒針は一斉に彼らに襲いかかった——

      毒蝎竟在幻境四处藏下待命的毒针,在这一瞬间皆在白女王的哭诉声中,朝着他们射了过来——

      ——その頃、太陽の近くの空須佐之男が身を挺して太陽を庇った。

      ——与此同时,太阳附近的天空中须佐之男以身躯挡在太阳前。

      【須佐之男】

      「雷盾。」

      際限なく発生する稲妻が、太陽を包み込み、守っている。同時に紡ぎ出された巨大な雷の網が、結界の代わりに蛇の大群と人々を隔てた。しかし無限にいる蛇魔もまた、太陽を囲んで食らいつき、毒で雷を打ち消している。

      源源不断的雷电化为保护层罩在太阳外侧,同时织成一张巨大的电网,如同结界般将蛇群和舞台之下的众人隔绝。然而蛇魔也无穷无尽,围在太阳上啃食,以毒素侵蚀雷电。

      【神堕ロチ】

      「千年前からずっと思っていた。処刑神と名乗ってはいるが、お前は何よりも守ることを優先する。果たしてお前は役割を間違えたのか?それとも守るべき者を間違えたのか?天照直々に処刑の神に任命されたのに、その両手は処刑のためにあるくせに、人々のためなどと、ふざけたことを——」

      千年前我就觉得,你虽自称是处刑神,但却素来以守护为先。究竟是你选错了自己的职责,还是选错了该守护的人?你是天照亲封的处刑之神,你的双手,本就是为了行刑而生,却说是为世人而来——

      最後の言葉を口にする前に、突然巨大な槍に下から襲われたヤマタノロチは、素早く後ろに下がった。須佐之男は再び巨大な化身を呼び出した。巨神は太陽を持ち上げると、蛇の大群をことごとく引き裂き、あっという間に敵を一掃した。

      话音未落,一柄巨枪突然自下而上刺来,八岐大蛇迅速退后。只见,须佐之男的巨神法相已然重新现世,巨大的身躯托起太阳,将缠绕其上的蛇群尽数撕裂,顿时毒蛇被一扫而空。

      【須佐之男】

      「お前のおかげで思い出した。」

      你倒提醒了我。

      彼の背後では、金色の巨神が太陽を高く掲げ、ヤマタノロチを睨みつけている。

      在他的身后,金色的巨神手捧太阳,高举过头顶,金色的双目凝视着八岐大蛇的方向。

      【須佐之男】

      「この腕は、守るためにある。そしてまた、殺すこともできる——」

      这双手,是为守护而生。也是,为杀戮而生——

      刹那の間に、須佐之男は金色の稲妻を纏うと、ヤマタノロチに襲いかかった。稲妻の隙間を駆けるヤマタノロチは、時に蛇魔を呼び出して攻撃を防ぎながら上へと昇っていく。蛇剣を持った彼がとうとう太陽の正面にやってきた時、突然現れた雷槍が彼の攻撃を防いだ。突如現れてヤマタノロチの体を貫いた雷槍は、彼を巨神の手の中に釘付けにした。

      刹那间,须佐之男周身迸发出金色的闪电,朝着八岐大蛇袭来。八岐大蛇在闪电中躲闪,唤出蛇魔挡下攻击一路向上,终于手持蛇剑来到了太阳的前方,却被雷枪一枪抵挡。雷枪猛然贯穿了八岐大蛇的身体,将他钉在了金色巨神的掌心之中。

      【須佐之男】

      「この世界の未来のために、相手が誰であろうと、俺は必ず処刑を貫く。」

      为了世界的未来,无论是谁,我都会处刑到底。

      痛みに苦しむヤマタノロチは目を開け、頭上にいる天照を見つめる。胸を貫いた雷槍を抜こうと試みたものの、それは微動だにせず、彼は思わず笑った。

      八岐大蛇吃痛地睁开双目,看向头顶的天照,他握住胸前的雷枪,试图将之拔出,然而雷枪却岿然不动,于是他笑道。

      【神堕ロチ】

      「つまり、勝利はお前にとって容易いものなのだな。」

      既然如此,那么胜利于你而言已唾手可得了。

      その時、星海を操る荒からの連絡の星が須佐之男の側に現れた。

      此时,一枚星辰浮现在须佐之男身侧,正是荒以星海发出联系。

      【神啓荒】

      「これまで不利な状況に追い込まれるたびに、ヤマタノロチは必ず罠を仕掛けてきた。今回は違うという保証はない。あの怪しい呪いの烙印のことを覚えているか?」

      至今为止每次八岐大蛇落难,都会设下陷阱,这次也难保再出变数,你还记得那个诡异的诅咒印记吗?

      【須佐之男】

      「ああ、あの烙印はヤマタノロチの協力者と何らかの関係があるものだろう。まずはヤマタノロチを捕縛し、ここで見張っておく。色欲の神は任せた。」

      不错,这印记必然与八岐大蛇的盟友有关。我先将八岐大蛇抓捕,在此看押,色欲之神就交由你们了。

      【神啓荒】

      「千年経って、ようやく忠告を聞き入れてくれるようになったか。」

      看来千年过去,你还知道听劝了。

      【須佐之男】

      「なんだその根拠のない皮肉は?今まで一度でも君の忠告を無下にしたことがあったか?」

      这话从何说起,你自小劝我的话,哪次我不听了?

      【神啓荒】

      「そうだな、それでも危険を顧みることはなかったが。」

      嗯,只是下次还敢罢了。

      ——破損した舞台の下

      ——破损的舞台之下

      荒が再び闇に目を向ける。

      荒再度看向眼前的黑暗。

      【神啓荒】

      「君の姉は気が狂ったように、自らの命を削って幻境の構造を変え続けている。星海の輝きさえも、彼女の幻術に遮断されてしまった。」

      你的姐姐发狂一般以死相搏,不惜消耗自己的性命一次次变化幻境。却是连星海的光辉,都被她的幻术所遮蔽了。

      【孔雀明王】

      「姉様の気配は完全に消えてはいない。」

      姐姐她并没有完全遮蔽自己的气息。

      【神啓荒】

      「ほう?」

      哦?

      【孔雀明王】

      「私たちは幼い頃に舞姫として選ばれ、孔雀の国の繁栄のために悪神に命を捧げる使命を背負ってきた。物心がついた時から、私は舞の練習に打ち込んできた。だからどんなに離れていても、悪神の気配を見過ごすことはない。それに幼い頃からずっと姉様と暮らしていたから、例え五感を失っても、私は彼女のもとに帰ることができる。」

      我们是自幼就被挑选的舞姬,为换取孔雀国的繁荣,将生命献给恶神。我从记事时起就苦练舞蹈,对恶神的气息极为敏感,哪怕在千里之外也能察觉。而我从小就和姐姐一起长大,纵使失去五感,我也能够一个人回她的身旁。

      【神啓荒】

      「星海は遮断されたが、輝きを失くしたわけではない。そもそも星々の輝きは現実ではなく、より高次元の「未来」にある。もし無限に広がる闇の中で悪神の気配を、姉の気配を感じ取れるなら、現在を通じて、「未来」にいる彼らに目を向けてみるといい。」

      星海被遮蔽,但并非真的丧失了光辉,众星的光芒原本就并非现实,而是流淌在更高维度的「未来」。若你能在这无边的黑暗中感知到恶神,感知到你的姐姐,那么,就试着通过现在,去看向「未来」的他们。

      【孔雀明王】

      「「未来」に目を向ける?一体どうやって……?」

      看向「未来」?但是要如何做…?

      【神啓荒】

      「君の場合、彼女の運命の旋律を感じればいいはずだ。いわゆる運命とは、過去から未来へと流れてゆく奔流のこと。」

      对于你的话,去感受她命运的旋律。而所谓命运,正是一道从过去流淌至未来的洪流。

      【孔雀明王】

      「過去……」

      过去么……

      孔雀明王は目を閉じ、姉と過ごした楽しい時間を思い返す。彼女の姉は、腰に手を当てている。一方、幼い自分は姉の足を踏み、そのまま姉に導かれている。初春に体を伸ばす花のように、彼女は闇の中でおもむろに踊り出した。

      孔雀明王闭上双眼,脑海中浮现起二人快乐的往昔。姐姐的手抱着自己的腰,年幼的自己踩在姐姐的脚背上,任由姐姐引导。如同初春的花儿一般伸展着肢体,在黑暗中缓缓起舞。

      【白孔雀】

      「一歩、また一歩……旋律に合わせて、神の声に耳をすますの。青、聞こえた?あれは風に揺れる麦の穂の音、咲き乱れる花の音、水と大地の音。すべては神の声、私たちが守っている故郷の音よ。聞こえたかしら?」

      一步,两步……不要忘记心中的鼓点,记得去聆听神明的声音。青,你听到了吗?那是风吹麦穗的声音,是花儿盛开的声音,是流水和大地的声音。这一切的一切,都是神明的声音,是我们所守护的家园的声音。你听到了吗?

      【青】

      「私……そんなに遠くの音は聞こえないし、遠くにいる神様に触れることもできない。でも聞こえた音もある……」

      我……我听不到那么遥远的声音,也触不到那么遥远的神明,但是我听到了……

      幼い青孔雀は、目を閉じて笑顔を浮かべると、そのまま姉に抱きついた。

      年幼的小孔雀闭着眼,露出笑容,任由自己靠进姐姐的怀抱里。

      【青】

      「私が聞いたのは——」

      我听到的是——

      【孔雀明王】

      「私が聞いたのは、姉様の……心臓の鼓動——」

      我听到的是,姐姐你…心跳的声音——

      恐ろしい形相をした白の女王が、闇の中に現れた。その鋭い爪が、孔雀明王の目の前に迫る。しかし、この未来を見通した尾羽が、その攻撃よりも早く巨蠍の殻を貫き、そのまま蠍の尾のほうに飛んでいった——

      悪神の硬い外殻は粉々に砕け、無限に広がる闇もひび割れ始めた。次の瞬間、風の音、水の音、星の輝き、そのすべてが閉鎖された静かな世界に入り込み、内部から世界を壊していった。漆黒の幻境が、世界の足元で轟音を立てて崩れていく——

      黑暗中浮现出白女王狰狞的相貌,利爪已伸到了孔雀明王的眼前。然而,更快一筹的是看透这未来的一片尾羽,它如利箭一般划开了巨蝎的躯壳,一路朝着蝎尾的方向而去——

      恶神坚硬的外壳骤然粉碎,无尽的黑暗也显露出道道裂痕。片刻之后,风声,水声,星光,争先恐后地冲进这静谧封闭的世界当中,从内部将其撕裂。漆黑的幻境,在世界的脚下,轰然倒塌——

      【孔雀明王】

      「色欲の神、私はもう幻境に囚われたりしない。過去は恋しく思うけれど、過去に留まりはしない。すべてを失った私は、背後の奈落に呑み込まれないためには、前に進み続けるしかない。そして今、私は奈落となる。あなたを呑み込んで、葬り去ってあげる。」

      色欲之神,幻境早已不能将我困住,我会留恋于过去,却不会停留在过去。因为,对失去一切的我而言,唯有不停奔跑,才不会被身后的深渊吞噬。而如今,我就是这深渊。我会将你吞噬,将你葬送。

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