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56、终焉之章 ⑤世界 ...

  •   城門を出た後、天域の天馬はずっと戦場の上空を駆け回っている。帝釈天は読心術を通じて晴明達と連絡を取り、空中から晴明達の動向を観察して、部隊の行動を支援している。

      天域的天马自从离开城门后,就在战场上空盘旋。帝释天凭借读心的能力和晴明等人联络,并从空中观测众人的动向,支援晴明的队伍得以顺利前行。

      【帝釈天】

      「空にいれば地上の蛇魔には邪魔されないが、やはり不便なところもある。簡単に仲間の安否を確認できるが、いざという時にすぐに駆けつけられない。この特別な能力のおかげで、盟友と友人の話が弾む様子を目にしても、仲間に加わることができず、少し落ち込んだ。」

      从高处能够避开地面的蛇魔,却也有不便之处。虽然能轻易得知其他人的安危,却无法立刻出现在他们面前。看到盟友们和同行的友人谈笑,我虽因这独特的能力而身临其境,却无法加入其中,也不免生出失落。

      【毘瑠璃】

      「落ち込まないでください、私達姉妹はいつもお側におります。」

      大人请勿寒心,我们姐妹二人永远侍奉在您的身侧。

      【帝釈天】

      「そうだな、それに今は感傷にふけっている場合ではない。毘瑠璃、蘇摩、天域の部隊を五手に分け、私から少し離れたところで陣眼の上空を守ってくれ。地上の陰陽師の部隊が危険な目に遭っていたら、弓矢で支援するんだ。ただし、地上の人々に気づかれてはいけない。雲の中に隠れているように。」

      说的也是,现在并非是悲春伤秋的时候。毗琉璃,苏摩,你们二人将我天域的兵力分为五路,与我拉开距离,相继在阵法上方盘旋。若发现地面的阴阳师军队陷入险情,就以弓箭支援。切记,将行踪隐藏在云后,不要让地上的人发现端倪。

      五手に分かれた部隊が離れると、帝釈天は自ら親衛隊を率いて晴明達を護衛し、幻術で三人の姿を隠した。黒夜山を進む晴明は、すぐに帝釈天の存在に気づいた。

      在五队人马离开后,帝释天又亲自率领一队亲兵自空中护送晴明一行,以幻术隐藏三人的行踪。在黑夜山前行的晴明很快就察觉到了帝释天。

      【晴明】

      「影から援護してくれているのか、帝釈天。」

      是你在暗中帮助我们吧,帝释天。

      【帝釈天】

      「やれやれ、もう気づかれてしまったか。」

      哎呀,这就暴露了吗。

      【晴明】

      「厳密に言えば、この件は天域とは関係がない。それでも君は自ら助けの手を差し伸べてくれる。やはり天人一族の言う通り、君は慈悲深い王のようだ。」

      此次事件严格来说与天域无关,你却还是前来相助,看来正如天人一族所说,你是一位慈悲的王者。

      【帝釈天】

      「ふふ、私は慈悲深い王などではない。ただ王として、借りは返さねばならない。あなた達は天域が危機に瀕した時に助けてくれた。当然お礼をしなければならない。」

      呵呵,我可不是什么慈悲之王,只是身为王者不便欠你恩情。你们既在天域危机之时出手相救,我自然也必须回以敬意。

      【晴明】

      「全てが落ち着いたら、私の庭院にも来てくれ。王としてではなく、私の客人として。」

      等到尘埃落定之后,请务必来我的庭院一趟,这一回不是作为王,而是作为我的客人。

      【帝釈天】

      「客人か、素敵な響きだ。以前都の市場で、店に並ぶ花や動物の形をしたお菓子を見た時、その美しさに見惚れてしまった。ああいう可愛らしい食べ物を天域の都でも楽しむことができれば、天人の民達も純粋な心を思い出し、争いが減るかもしれない。晴明、教えてくれ。もし異族の者が商売の話を持ちかけたら、人間の王族は断るだろうか?」

      你的客人吗,这听起来确实魅力非凡。之前在京都集市上,看到罗列在店中那些做成花与动物形状的点心,其精美让我也为之赞叹。那般惹人怜爱的食物,若是也能出现在天域的都城,想必天人子民的心中,也会多几分纯真少几分纷争吧。晴明啊,以你对人族王室的了解,若是外族意欲通商,可会遇到难处?

      【晴明】

      「恐らく簡単には承諾しないだろう。」

      恐怕并不会轻易应允。

      【帝釈天】

      「ならば、力ずくで押し通すしかない。」

      既然如此,我也就只好强行促成了。

      【晴明】

      「……新たな危機はいつもこうして予想外なところから襲って来る。平安京は苦難の道を歩むしかないようだ。」

      ……总这样一不小心就引发出新的危机,平安京可真是命途多舛。

      【帝釈天】

      「平安京を待ち構える運命は、確かに残酷だ。」

      确实是风雨飘摇的平安京呢。

      【晴明】

      「一人で空に残されたことを恨んでいるのか?」

      你该不会在记仇被单独留在天上的事吧。

      【帝釈天】

      「ふふ、まさか。」

      呵呵,怎么会。

      地上の部隊がそれぞれ担当する陣眼に向かっていくのを確認し、晴明達もこっそりと黒夜山の禁域に入った。

      看着地面上的几队人马接近各自的阵眼后,晴明一行人也隐秘地潜入了黑夜山的禁地之中。

      【帝釈天】

      「蘇摩、毘瑠璃、我々の目的地にある陣眼の場所は見つけたか?」

      苏摩,毗琉璃,可有找到我们目的地的阵眼所在?

      【蘇摩】

      「所在地は既に突き止めました、いつでも出撃できます。」

      已经确认了地点,随时可以出击。

      【帝釈天】

      「一部は待機部隊として雲の中に残れ。あなた達二人は、精鋭部隊を率いて陣眼を制圧せよ。」

      留些人马在云端待命,你们二人,率精锐下界镇压阵眼。

      【蘇摩】

      「帝釈天様はご一緒されませんか?」

      您不去吗?

      【帝釈天】

      「この討伐において一番重要なのは陣眼制圧ではなく、晴明と共にヤマタノロチ本人を倒すことだ。蛇魔は数こそ多いが、知恵を持たない。人を絶滅の危機に追い込むことができたのは、やつらに手強い王がいるからだ。その王は、部下を屠られても、財産を奪われても、城を焼き尽くされても、必ずまた返り咲いて襲ってくる。彼を倒す方法は最初から一つしかない。晴明達がこの計画に賛成したのも、それに気づいたからだろう。それはつまり、彼本人を倒すことだ。」

      这场讨伐之战的重中之重,并非镇压阵眼,而是协助晴明击破八岐大蛇本人。这些蛇魔虽然数目众多,但并无智慧,之所以能将人界逼到灭亡的境地,是因它们有着极为难缠的王。这样的王,即使诛灭他的下属,夺取他的财产,烧毁他的城池,假以时日仍会卷土重来。真正打败他的方法自始至终就只有一个,晴明他们认同了眼前的计划,想必也是认识到了这一点。就是对他本人出击。

      【毘瑠璃】

      「それでも、部外者である帝釈天様は自ら出撃しなくても、陣眼を一箇所制圧すれば、十分に恩を返したことになりませんか?」

      即使如此,身为局外人的帝释天大人您也没必要亲自去下手,帮忙摧毁一处阵眼,就已是仁至义尽了。

      【帝釈天】

      「毘瑠璃、蛇というのは、実は目がほとんど見えないんだ。故に、目の前に現れた生き物にはとても残忍で、絶対に逃さない。平安京に協力すると決めた時から、私は獲物としてあの蛇に睨まれ続けている。そして獲物と狩人は、往々にしてどちらか片方しか生き残れないものだ。」

      毗琉璃啊,蛇这种东西,双目其实几乎是看不见任何东西的。因此,它才对在自己面前的活物尤为残忍,一个也不会放过。当我选择为平安京而奔走的时候,就已被那双蛇眼盯着并视为猎物了。而猎物和猎人,往往只能留下一个。

      【毘瑠璃】

      「帝釈天様……」

      帝释天大人……

      【蘇摩】

      「毘瑠璃、下がりましょう。帝釈天様の邪魔をしないように。」

      毗琉璃,我们退下吧,不要打扰帝释天大人集中精神。

      二人が出ていくと、帝釈天は冥想に集中し、無限に広がる精神世界をくぐり抜け、数多の人々の悲鳴の中で特別な声を探し始めた。精神領域の奥、万物の根源のように人々の苦痛と繋がりながら、沼のような闇の中に隠れている漆黒の影が浮かび上がる。それに触れたものは忽ち生気を失い、沼の奥に沈んでいく。

      二人离去后,帝释天通过冥想,在无垠的精神世界中穿梭,在无数苦痛的人界之民的悲鸣声中搜寻着不同的声音。在精神领域的深处,浮现出一个漆黑的身影,如同万物的根源一般与众人的苦痛相连,却又隐藏在泥沼般的黑暗中。凡是它所触及之物都即刻丧失了生气,沉入淤泥之底。

      【???】

      「招かれざる客よ、名乗れ。」

      不请自来的访客,报上名来。

      【帝釈天】

      「私を中に招いたのに、私の名を知らないというのか?」

      既将我召入门中,如何会不知我的名讳?

      【???】

      「天人の王、その傲慢は賢王の名に泥を塗るぞ。お前は果たして本当に民に称えられるような王、讃頌を享受できる王になれるのか?」

      天人之王,你的傲慢有辱贤王之名,你可以为,你当真能享万民的称颂?

      【帝釈天】

      「民が慈悲を祈れば、私は賢王になる。民が刑罰を求めれば、私は暴君になる。王たる者、民のために生き、国のために死す。」

      万民祈求慈悲,我便是贤王,万民希求刑罚,我便是暴君。为王自当生而为民,亡而为邦。

      【???】

      「民の求める存在になる、それがお前のやり方か?」

      化为子民所祈求的一切,便是你的为王之道吗?

      【帝釈天】

      「いかにも。」

      正是。

      【???】

      「ほう?もしお前が民が望む者でしかないのならば、今ここにいるお前は、一体何者だ!自分の意志で□□を捨て幻影となった殉教者め、お前ごときが、王と名乗るか?」

      哦?若是万民心中的你才是你,那面前的你,又是何人!自愿舍弃肉身堕为幻影的殉道者,凭你,也敢自称是王吗?

      黒い影が帝釈天の目の前で膨らんでいき、人々の悲鳴と嘆きを悉く呑み込んだ。終わりの見えない姿はやがて無限の闇となった。飲み込まれた世界は死のような静寂に包まれた。この世には帝釈天しか残っていないかのようだ。しかし帝釈天は気にすることなく蓮の花を放った。帝釈天の命令を受けた蓮は闇の中に根を下ろし、闇を吸収して育つと、瞬く間に咲き誇り、瞬く間に枯れ果てたが、闇の世界の一角を切り裂いた。結界は裂け目から崩れ、世界の本来の姿を現した。号泣と嘆きが波のように押し寄せ、砕けた影の中にようやく人の形が浮かんだ。巨蛇が泥沼の中でうねり、いくつもの蛇眼が帝釈天を囲む。

      黑影在帝释天的面前逐渐变大,将世人的悲鸣和哀叹吞入其中,其身形无边无际,最终化为无尽的黑暗。而被吞没的世界终化为死寂,世间仿佛只留下帝释天一人。然而帝释天却不以为然,而是放出莲花,命它扎根黑暗之中,吸吮黑暗生长,迅速绽放,又迅速枯萎,终在黑暗的世界打开了一处裂口。结界从裂口处不断碎裂,显露出世界本来的面貌,哭号和哀叹潮水般扑面而来,碎裂的阴影中终于浮现出来人的身形。巨蛇在泥沼中盘绕,一双双巨大的蛇眼环绕在帝释天的周围。

      【帝釈天】

      「出会い頭にとんだ茶番を見せてくれたな。ヤマタノロチ、噂通りの悪趣味っぷりだ。」

      一见面就演出这等闹剧,八岐大蛇,你果然如传闻中那般恶趣味。

      【ロチ】

      「客人が遥々訪れてくれたのに、全力でもてなさなければ失礼だろう。本当は黒鏡を使って幻術の中に閉じ込めるつもりだったが、見破られてしまった。さすがは幻術の王と言うべきか。鏡に映し出された自分すら信じないとはな。」

      你既远道而来,我又怎能不尽心尽力留客。只不过本想用这黑镜让你困在自己最得意的幻术之中,却被识破了。真该说不愧是幻术之王吗,竟然连镜中映出的自己,都不肯相信呢。

      【帝釈天】

      「狡知の神には敵わない。私の読心術を完全に隔絶できたのは、あなたが初めてだ。」

      倒是不如诡诈之神,能如此彻底隔绝我的读心术,你倒也是头一个。

      【ロチ】

      「ならば、単刀直入に要件を教えてもらおう。私も気になっている。天人の王の期待に沿えるもてなしとは、一体どんなものか。」

      既然如此,不如直截了当地告诉我来意。我也好知道,到底该如何待客才能应得上天人之王的期待。

      【帝釈天】

      「それはここまで事態をこじらせたあなたの目的次第だ。」

      那就要看你闹出这样大的动静,到底是想做些什么。

      【ロチ】

      「ここに辿り着き、これを目にしたのに、私の目的が分からないはずがないだろう。」

      找到了这里看见了这些,如何还会猜不到我的目的。

      暗い幻境の中に、巨大な天秤の幻影が浮かび上がった。天秤に巻き付く巨蛇が、三貴子の神像を締め付ける。蛇神本人は、厳然たる姿で審判者の如く天秤の中央に座り、苦しみに悶える現世を見下ろしていた。

      黑暗的幻境中浮现出巨大的天平幻影,巨蛇环绕在天平之上,将三贵子的神像缠绕。蛇神本人正坐在天平的正中,如同庄严的审判者一般,俯瞰翻滚着一切苦痛的人世。

      【ロチ】

      「一族の王であるお前も、頂からこのような盛況を目に収めたことがあるだろう。悲しく嘆かわしく、度し難い人間が苦しみに悶え、足掻き、最後には川底に沈み、誰も見向きしないへどろになる。泥の中にいる人々は繋がっている。泥の中から掬おうとしても、一人を助けるには、千人を犠牲にしなければならない……帝釈天よ、お前もそう思うだろう?」

      身为一族之王的你,想必也曾在高处见过此等盛景吧。可悲可叹又无可救药的世人在无尽的苦海中翻滚,挣扎,最终沉入河底,化为无人问津的淤泥。泥中的世人又手脚相连,虽然想把他们从泥中掬起,可每救一人,却要牺牲千人——帝释天啊,你难道不是这么想的吗?

      【帝釈天】

      「その通りだ。この世には弱肉強食の法則が確かに存在する。強者は弱者を踏み台にして高みに昇る。人々は皆そうなることを望んでいるが、その望みが叶う者はわずかしかいない。そして最後は誰もが泥の中の蓮のように絡み合い、時に沈んだり、時に浮かんだりする。水面に浮かび出る一時の安寧を奪い合う。少しでも油断すれば、永遠に泥の底に沈んでしまう……これはこの世の生きとし生けるものの生き様だ。」

      你说的不错。这世界的确有弱肉强食的法则,强者将弱者踩进泥中,走上高处。然人人都想如此,但如愿的又有几人,最终所有人都如泥潭中的莲根般交错,时沉时浮。争夺着从水中伸出头颅的片刻安宁,稍有松懈,便会永沉泥底——这就是此世一切有形之物的生存之道。

      【ロチ】

      「その生き様に、賢王と自負するお前も甘んじるしかないのか?」

      这般生存之道,自命为贤王的你,竟然心甘情愿认同?

      【帝釈天】

      「甘んじてなどいない。答えを探すべく、かつて私は幻術を通じて、忉利天という名の故郷に辿り着いた。そこで私は、違う生き方を見つけた。万物は区別なく、形のない世界に生きている。どんな願いも叶い、この世では想像できないほどの幸福が手に入る。」

      自然是不认同。为探寻答案,我曾通过幻术,到达了名为忉利天的故土。在那里,我找到了不同的生存之道,在万物不分彼此,形体不在的世界中,可以实现任何的心愿,获得此世所无法想象的幸福。

      【ロチ】

      「ふふふ、ならば、なぜまだここにいる?民を切り捨てると決め、恐れをなして逃げ出したのか?」

      呵呵呵,既然如此,你为何还以有形之身出现在这里,可是知难而退,决定弃子民于不顾了?

      【帝釈天】

      「私は形なき忉利天をもって人々を救いたい。だが人々は形ある苦界を手放してはくれない。」

      我愿以无形的忉利天救世人,世人却不肯放弃有形体的苦界。

      【ロチ】

      「まさに愚の骨頂、お前もそう思うだろう?」

      真是无知啊,你想必也是这么觉得吧?

      【帝釈天】

      「そうかもしれない。しかし人々を忉利天へ誘ったとしても、ほとんどの人に抵抗され、受け入れてくれるのはたった一人かもしれない。それでは一人を救うのに千人を犠牲にしたも同然だ。その道を選ぶのは、あまりにも愚かだ。私は喜んで人々が望む王になる。人々が望む幻のようなものだ。私は彼らが望む全てを与える。人々が苦界を欲しがるならば、私は彼らが苦しみに悶える姿を愛でるしかない。」

      或许吧。可倘若我邀世人前往忉利天,却有无数人拼死抵抗,终只有一人欣然前往,那和救一人牺牲千人究竟有何区别。选择了那条道路的我,怕才是真正的一叶障目。如今的我已甘愿化为世人心中的王,比起肉身更接近于世人的幻象,向子民投以所期许的一切。若世人渴望苦界,那面对其苦苦挣扎的姿态,我也只有一心怜爱的道理。

      【ロチ】

      「いつも残酷な天人の王が、これほどまでに慈悲深いとは。これはこれは、実に勉強になった。おかげである旧識のことを思い出した。彼も仁義や道徳にうるさい聖人だった。冷たい態度とは裏腹に、喜んで殉教するような人だった。悪の化身である私ですら、彼を見ると少し哀れに思う。しかし帝釈天、お前は分かっているか?世の中の水は無限に湧き続けるが、火はいつか燃え尽きる。私の哀れな旧識も、最後には燃え尽きてしまった。しかし私が残した罪は数千年に渡って暗流の如く流れ続けた。無数の城に、村に、人の心に、魂に、潤いをもたらした。枯れ果てた地には私が潤いを与え、繁栄をもたらした。飛んで火に入る夏の虫か、水を得た魚か。天人の王よ、どの結末を選ぶべきか、答えは明白ではないか?」

      没想到素来冷酷的天人之王居然心怀这般深厚的慈悲,真是令人大开眼界。倒也让我想起一位故人,那人也曾是一位满口道义的圣人,冷淡的脸孔之下却隐藏着甘愿献身的殉道之心。以至于身为万恶化身的我,对着他竟也生出了几分怜悯来。然而帝释天啊,你可知道这世间虽然有斩不断的流水,却没有烧不完的火焰。那位可怜的故人终究还是烧尽了自身的火,而我留下的罪孽却在人世如暗河般流淌了数千年,泽润了无数城池,村庄,人心,魂魄。那些干涸荒芜之地,是我使之满盈,是我使之繁盛。飞蛾扑火和泽鱼得水,天人之王啊,你来到这里究竟是该选择哪一个结局,答案难道不该是一目了然吗?

      【帝釈天】

      「形あるものはいつか滅びる。これはこの世の法則だ。しかし忉利天を捨ててこの世界を選んだ以上、私はその法則に従う。」

      有形之物终有尽时,是这世间的法则,我既已放弃了忉利天选择了这个世界,就会遵循它的法则。

      【ロチ】

      「悲しく嘆かわしい、哀れな者よ。前方に待ち受けるのは火の海だと知りながらも歩みを止めず、自分は王だと言い張る。しかしいざとなれば、己が道には殉じても人々には殉じない。民がそれを知ったら、一体どう思うだろうな?」

      可悲可泣的可怜之人,明知眼前是火海却还是大步向前,口口声声自称为王。真到了紧要关头,却殉道而不殉世人,真不知子民们听了会作何感想?

      【帝釈天】

      「民が知る必要はない。忉利天の「幸福」を知る必要がないのと同じだ。この世に生きる者は時に、無知でいたほうが幸福でいられる。」

      我的子民不必知道,正如他们不必知道忉利天的「幸福」那般,有时这世上,无知就是极上的幸福。

      【ロチ】

      「しかしここと忉利天以外にも、各々が異なる法則を持つ千万の世界が存在するとなればどうなる?」

      但若是除了这里和忉利天之外,还有着万千其他的世界,而它们又各自有着截然不同的法则呢?

      【帝釈天】

      「……」

      【ロチ】

      「天人の王よ、幾千万の宇宙の中に「滅び」のない世界が存在しているとすればどうだ?その世界はお前の求める理想郷か?そこにお前の求める答えがあるのか?お前は、最愛の民を連れて、そこに向かうか?」

      天人之王啊,倘若在万千的宇宙之中,还存在着不以「衰亡」为铁则的世界呢?那样的世界中是否隐藏着你渴求的答案,是否就是你期望的理想之地?你会不会,想要带着你心爱的子民们,去往那里呢?

      ……幻境の外、林の中

      ——幻境之外,山林中

      蘇摩と毘瑠璃は雲上の馬車を降りると、天馬に乗って地上に降り、陣眼に向かって進軍を始めた。出発して間もなく、先頭に立つ主将蘇摩は急に手綱を握り締め、何かを察したように後ろを振り向いた。

      苏摩和毗琉璃离开了云端之上的马车后,驾驭天马来到地面,朝着阵眼的方向行军。然而没走多久,为首的主将苏摩突然拉紧缰绳,回转头来警觉地看向了后方。

      【蘇摩】

      「何者ですか?隠れても無駄です!」

      来者何人,躲躲藏藏是何居心!

      蘇摩の声が響く中、林の中から雑然とした風音が聞こえてくる。それは次第に羽ばたきの音に変化した。四枚の翼を持った何者かが林の中から飛び立ち、二人の目の前に降り立った。

      在苏摩的斥责下,林中四处响起不规则的风声,树叶的响声逐渐化为翅膀扑打的响声。一个长有四翼的身形从林中降下,落在了二人面前。

      【蘇摩】

      「金翅鳥ですか?天魔軍にまだ生き残りがいて、私達の後をつけていたとは!」

      竟然是金翅乌?那天魔之军竟还有幸存之人,还跟了我们一路吗!

      言った傍から彼女は背負っていた弓を手に取り、矢をつがえて敵の心臓に狙いを定めた。しかし矢を放つ前に、相手は彼女の目の前まで迫ってきて、弓を引く彼女の手を掴んだ。

      说罢就抓起了背上的长弓,搭弓准备一箭射穿眼前敌人的心脏。然而箭尚未射出,那身影突然冲到了面前,一把抓住了她搭在弓弦上的手。

      【迦楼羅】

      「やはり俺様のことは綺麗さっぱり忘れたか。」

      就知道你一点也不记得我。

      【蘇摩】

      「何のことですか?」

      你说什么?

      【迦楼羅】

      「その、俺様はな……翼の生えた鬼族なんだ。俺様の故郷では、皆翼が生えている。大騒ぎするようなことじゃない。」

      我是说,我只是一个……一个长翅膀的鬼族罢了,翅膀这东西在我老家是人人都长的,何必看了就这么大动干戈?

      【蘇摩】

      「馬鹿馬鹿しい嘘はやめなさい、この私を騙せるとでも?」

      说出这等不修边幅的谎话,难道以为我会相信吗?

      それを聞いた迦楼羅は蘇摩の手を放したが、後ずさりする様子もなく、そのまま弓矢に無防備な体を晒した。

      迦楼罗闻言松开了苏摩的手,但是并不后退,让箭头指着自己胸口。

      【迦楼羅】

      「弓を引き、矢をつがえる。的は俺の心臓か。信じられないなら、矢を放つがいい。」

      箭在弦上,弦在手里,弓拉满了,靶在这里。你要是真不信,就放箭吧。

      しばらく対峙した後、蘇摩は参って矢をしまった。

      二人对峙良久,终于是苏摩败下阵来,放下了弦上的箭。

      【蘇摩】

      「戯言を。降参した兵を殺すのは道義に悖ります。事情が分からないまま殺したら、後味が悪いというもの。正体不明の鬼族よ、私の前に跪き、事情を説明することを許します。」

      真是满口胡言。但自古以来军不斩降将,兵不斩来使,就这么不明不白地除去你,我夜里也睡不安生。来路不明的鬼族啊,我准你在我马前跪下,说明你的来意。

      それを聞いた迦楼羅は、少し距離を取って、軍馬の前で片膝をついた。

      迦楼罗闻言,终于重新落地,但只弯了单膝跪在了战马前。

      【迦楼羅】

      「翼が大きすぎて天人のような堅苦しい姿勢はとれないんだ、これで勘弁してくれ。天人の女将軍よ、俺様は恩返しに来たんだ。」

      翅膀太大做不来你们天人的那些麻烦姿势,你就当我这是跪了吧。天人的女将啊,我是来报恩的。

      【蘇摩】

      「恩返し?」

      报恩?

      【迦楼羅】

      「俺様はもともと平の兵士だったが、色々あって竜巣城に移り、非運の仲間達と共に数百年間努力を続けた。ようやく生活が良くなり始めた頃、突然あの天魔が攻めてきて、俺達に服従を強いた。それからは自由のない、あいつに弾圧される日々を送ってきた。長い間耐え続け、俺はようやく機会を見計らって脱出を果たした。どこに行くか、誰の配下に入るべきか悩んでいた時、恩人が出戦すると聞いたので、こうして恩返しに参った次第だ。」

      我本是一届无名兵卒,几经辗转后住进了龙巢城,和一群难兄难弟努力了数百年。日子刚有了些起色,谁知那天魔突然打进门强迫我们为他卖命,从此以后日日被他压迫,再没过上过一天自在日子。我忍辱负重许久,这才看准时机,从他手底下逃了出来。然而这一出来却也无处可去,正想着能去投奔谁时,就听说了恩人要出征的消息,于是就急忙跟来了。

      【蘇摩】

      「その恩人とは?我が瑠璃城軍の精鋭なのですか?」

      你口中的恩人是何人?可在我琉璃城军精锐之列?

      【迦楼羅】

      「そうだ!恩人は優しいだけでなく、勇気もありゃ見識もある。あの頃、戦乱のせいで難民がたくさん出た。その時瑠璃城は難民を助けていたが、俺様達は……鬼族だから、皆に敬遠されてた。その時恩人がお粥を恵んでくれて、俺様は命拾いした。」

      那是自然!我那恩人不仅心肠好,更是胆识过人。想当年战乱四起流民遍地,琉璃城开城接济,我这等……鬼族,虽有人怜悯,却无人敢上前。正是那人端来一碗甜汤,把我从鬼门关拉了回来。

      【蘇摩】

      「そんな過去が……しかし、あの戦争はもう百年も前のこと。なぜ今になってようやく恩返しをしようと思ったのです?」

      竟然还有这样的渊源……既然如此,当时的战事已过百年,为何现在才知报恩?

      【迦楼羅】

      「話せば長くなる。あの方のような貴人には、恩返しをしようにも、俺様にできることなどあまりない。せっかく機会が巡ってきても、あの方を満足させられるような結果にはならなかった。結局恩返しにはならずに、あっという間に忘れ去られてしまった。だからなんとか恩返ししたいんだ。」

      这就说来话长了,我那恩人本来地位崇高,平素也没什么用得到我的地方,好不容易遇上机会,却做得不合人家心意。最后也没被领情,一转眼就被人忘记了,着实有些不甘心。

      【蘇摩】

      「百年過ぎても、一飯の恩を覚えていて、誤解されてもめげないなんて。鬼族にも恩義に厚い人がいたのですね。」

      一饭之恩百年不忘,即使被误解也不气馁,虽是鬼族,不曾想却是个情深义厚之人。

      【毘瑠璃】

      「姉様、彼の話を信じるの?あの時、姉様は確かに種族の区別なく、何度も被災者達を助けた。でも八方塞がりの窮地にさえ追い込まれなければ、鬼族は絶対に来なかった。本当に援助を受けた鬼族は、ほんの一握りしかない。それに随行の女官には鬼族を助ける度胸なんかなかった。つまり、彼の話が本当だとしたら……」

      姐姐居然就这么信了吗?当年姐姐确实曾打开城门,不忌种族身份数次接济灾民,但是真的前来讨食的鬼族少之又少,若非真的走投无路根本不会上前。更何况当年的女官都不敢接济鬼族,就是有,也就是——

      【迦楼羅】

      「そんな事言わないでくれ、俺様は本当に恩返しに来たんだ。必ず今回の作戦の役に立つ。誠意を示すために、将軍への献納品として、新鮮な食材を調達して、竜巣城でよく食べられている料理を作ってきた。」

      别这么说嘛,我既然真心实意来报恩,定会助得此行旗开得胜。为表诚意我还特意在这附近找了些寻常食材,做了些我龙巢城的食物献给将军。

      【蘇摩】

      「そういうことなら、どんな料理か見てみましょう。」

      既然如此,准你献上。

      それを聞いた迦楼羅は嬉々として立ち上がり、蘇摩の前に持ってきた料理を置いた。彼の「料理」を目にした途端、蘇摩は腰に差していた短刀を抜き、それを真っ二つに斬った。

      迦楼罗闻言面露喜色,于是起身,将一包东西端到苏摩跟前。然而苏摩看清了他口中所谓的食物,瞬时拔出了腰间的短刀,一刀将那手中的东西砍成了两段。

      【蘇摩】

      「鬼族め、やはり蛇神の手下でしたか。毒蛇を献上するためによくもあんな嘘を!」

      你这鬼族,果然是那蛇神的手下。信口雌黄就为了献上毒蛇!

      【迦楼羅】

      「ええ?これは昨夜俺が捕った蛇を一晩かけて焼いた……」

      欸?这可是我昨晚亲手抓了烤了一晚上的……

      【蘇摩】

      「問答無用!」

      多说无益!

      この時、空を覆い隠すほど巨大な蛇魔が地下から這い出し、蛇の群れを率いて蘇摩達を囲んだ。

      这时,一条巨型蛇魔突然从地底钻出,巨大的身形遮蔽天日,率领蛇群将苏摩一行层层包围。

      【蘇摩】

      「騎兵、飛べ!弓兵、矢を放て!」

      骑兵起飞!弓兵放箭!

      しかし天馬が翼を開きもしないうちに、蛇達はその脚に絡みついた。逃げきれなかった騎兵は天馬と共に蠢く蛇の群れの中に落ちた。

      然而天马尚来不及展开双翼,就被蛇群缠绕上了腿部,未能逃开的连人带马跌入蛇群。

      【毘瑠璃】

      「皆、蛇魔に気をつけて!」

      大家,小心蛇魔!

      軍馬を操り蛇魔を蹴り飛ばすと、毘瑠璃は落馬した部下を助け再び馬上に座らせたが、その隙に蛇魔が後ろから襲い掛かり、彼女の首を絞めつけた。間一髪で蘇摩は木の上に飛び上がり、素早く矢をつがえて毘瑠璃の背後の蛇魔を狙った。しかし矢を放った直後、巨蛇が蘇摩を襲った。

      毗琉璃驱使战马踢开蛇魔,将跌落的部下拉上战马背,一时迟疑,自己却被身后袭来的蛇魔缠住了脖颈。情急之下,苏摩跳上树枝,敏捷地抓起弓箭,瞄准了毗琉璃身后的蛇魔,出箭的那一瞬,巨蛇趁机正面冲向了树上的苏摩。

      【迦楼羅】

      「喰らえ!」

      看招!

      迦楼羅が林の中を素早く移動し、手に持った槍で巨蛇を貫き、木に釘付けにした。一難を逃れた弓兵達も、空中で陣形を整え矢を放った。身動きの取れない巨蛇に矢の雨が降り注ぐ。巨蛇はもがき続けたが、最後には動かなくなった。

      迦楼罗在树枝间敏捷地穿行,用手中的长□□穿了巨蛇的头颅,将它钉在了树干上。逃过一劫的弓兵们终于在空中列队放箭,无数箭矢落在无法动弹的巨蛇身上,一阵挣扎之后巨蛇终于不再动作。

      ……一方、幻境の中

      ——另一方,幻境之中

      【帝釈天】

      「各々が異なる法則を持つ、千万の世界?」

      各自拥有不同法则的,无数的异界?

      【ロチ】

      「そうだ。この世界のように、神々がとうに民に絶望し、人間界に干渉しなくなった世界もある。しかしまた、忉利天のように民を慈しんだが、最後に神自ら滅びを選んだ世界もある。ならば、人に興味を持たず殺戮を楽しむ神がいる世界、あるいは神々を敬わず神殺しを行う者がいる世界が存在したとしてもおかしくはない。帝釈天よ、この無数の異世界の中には、お前が忉利天を天域に降臨させ、お前の言う最高の幸福を民に与えることができる世界も必ずあるはずだ。そして私が世の中を審判して世界を作り直し、生まれ変わった万物に最高の自由を与える世界も必ず存在するのだ。私が欲しいのは、そのあたりまえに存在する可能性にすぎない。」

      没错,就如同在这个世界里,神族仿佛早早地就对子民失望,千年不曾过问人世。但在这世界之外,也有如同忉利天那样对子民满心慈悲,最后却也是天神自取灭亡的世界。既然如此,那么神对世人兴趣缺缺,甚至以屠戮为乐的世界,又或是世人从不曾爱戴神族,反而弑神的世界,也再自然不过地存在着。帝释天啊,在那无限的异界之中,也一定存在着你将忉利天降临天域,使万民获得你口中的无上幸福的世界。也定然存在着我审判世间重塑世界,使新生的万物获得无上的自由的世界。我想要的,不过是那个理所当然存在着的可能性罢了。

      【帝釈天】

      「それが滅びをもたらすとしても、その可能性を追い求めるのか?蛇神、その世界に存在するのは一体何だ?この世の生きとし生けるものを犠牲にしてまで手に入れるべき価値があるのか?」

      不惜毁灭,也要追求那样的可能性吗?蛇神,那个世界之中究竟有什么,值得你拿世间一切生命为代价去换取?

      【ロチ】

      「何が存在するのか、だと?違う、お前は勘違いしている。そこには何もない。この世界の運命が歪んでいるのは、何かが欠けているからではなく、本来存在してはならないものが現れたからだ。それは全ての足掻きや嘆きの源、まだ希望を持つ命をも度し難いものに変えていく猛毒。この世界には、生贄にされた幼い巫女を救うべく己の魂を二つに分かち、陰陽が分かれる苦しみに永遠に苛まれ、己を忘れた者がいる。この世界には、異族から領地内の民を守るため、首を刎ねられ、自慢の力も威厳も失い、酒に溺れて日々を過ごす者がいる。この世界には、我が子の命を奪われ、復讐の業火を放ち、栄華を極めた町を地獄に変えた者がいる。この世界には、かつての友人と対峙し、己の民を守るため、その友人に命を奪われた者がいる。また、故郷のために、かつての友人の命を自らの手で奪い、最後には一族のために命を絶った者がいる。私は私に問う。この全ては一体何のためだ?私は世界の理に問う、この全ては本当に度し難いものなのか?この世に「愛」というものさえなければ、この全ては起こらなかった。衆生は泥沼の中で足掻き続ける。それは泥沼の下には神が罪人に与えた罰、地獄が広がっていると勘違いしているからだ。しかし実際はどうだろうか?人々の泥沼は、悪夢ではない。神々に捨てられ、荒れ果てた地に過ぎない。天地を創造しておいて、何故正義と悪をもって世界を二つに分かち、そして「悪」を捨て、放っておくのか?世界の主であるにも関わらず、荒れ果てた地を顧みもしない。それが神の怠惰でなければ、一体何だというのだ?私が諦めない限り、私が怠らない限り、私は許す。人々に泥沼の中にある罪を侵せと命じる。彼らが泥沼の底に沈み込むことを、へどろを啜ることを、その嘘を見抜くことを望む。」

      有什么?不,你搞错了,是没有什么。这个世界的命运之所以扭曲,并不是因为缺失了什么,而是多了一样本不该出现的东西。它是这泥潭中所有挣扎和叹息的源头,是将所有尚存希望的生灵变得无可救药的毒药。在这世界中,曾有人为救下被献祭的年幼巫女,选择将自身灵魂一分为二,从此永受阴阳分离之苦,连自己也忘了自己究竟是谁。在这世界中,曾有人为从异族手中保护领土子民,被砍下头颅,失去了引以为傲的力量和威严,只能纵酒度日。在这世界中,曾有人儿女被残害,悲愤之下放火复仇,使繁京一夜间化为地狱。在这世界中,曾有人与过去的友人对峙,为保护子民丧生在友人的手中。又曾有人为了故土亲手屠戮过去的友人,最终却为了一族的责任而自裁。我问我自己,这一切究竟是为了什么,我问这世间的法则,这一切难道真的无可救药吗?当然不是。只要这世上从一开始就没有名为「爱」的事物,这一切就不会发生。众生在泥沼中挣扎,是因误以为泥沼之下是不可饶恕的地狱,有着神设下惩治罪人的刑罚。但是事实究竟如何?世人的泥沼并非噩兆,那里不过是一处被诸神舍弃的荒地罢了。为何创造了这世界却将它以正义与罪恶一分为二,为何将「罪恶」抛弃不顾?既然是这世界的主人,却放任那荒野存在,不是神的怠惰,又是什么?但只有我不会舍弃,只有我不会怠惰,我会原谅,会命世人去犯下那泥沼中的罪行,鼓励他们沉入那泥沼之底,去吸食那污泥,去看破那谎言。

      【帝釈天】

      「戯言を。」

      一派胡言。

      【ロチ】

      「ならばお前はどう考える?」

      你又有何高见?

      【帝釈天】

      「愛憎別離は確かに多くの悲劇を生み出した。争いの源にもなった。しかしそれは弱者の証ではなく、強さの秘訣だ。全てが手に入る忉利天においても、「愛」を手に入れることは最高の幸福だ。」

      爱憎别离确实是无数悲剧的雏形,也是万千纷争之源头,但它却并非是弱者的证据,而是强大的灵药。即使是在可以拥有一切的忉利天,获得「爱」也是至高的幸福。

      【ロチ】

      「なるほど。天人の王よ、お前は「愛」によって強くなった。しかしお前は「愛」をもって人々の幸福を紡ぎ出し、民を苦難から救ったのか?」

      原来如此,那天人之王啊,你可是因「爱」而强大了,可是因「爱」而谱写出世人的幸福,拯救臣民于危难了吗?

      【帝釈天】

      「それは違う。私は弱い。千人を犠牲にして一人を救うべきか、一人を犠牲にして千人を救うべきかという矛盾に、今も囚われ続けている。しかしそれでも、私は民のために進む。」

      不,我依然弱小,时刻挣扎在以千人为代价救一人,与牺牲一人保千人的矛盾之中。但即使如此我也会为子民前行。

      【ロチ】

      「そうか。お前は私を倒せると自負しているが、それは「愛」がお前に勝利をもたらすと信じているからか?」

      既然如此,你已然是抱着能将我置于死地的自信,认为「爱」能够助你得胜吗?

      【帝釈天】

      「いかにも。」

      正是。

      【ロチ】

      「よかろう。」

      好。

      ……林の中、陣眼の近く

      ——山林中的阵眼前

      体中に無数の矢が刺さった巨蛇が突然蘇り、水のかかった粘土のように溶解し、数匹の小さい蛇になった。小さな蛇は空中に飛び上がると天馬の体を絞めつけ、鎖のように天馬を地面に引きずり下ろした。蛇の群れの中に落ちた騎兵達はぐるぐると蛇魔に巻き付かれ、悲鳴をあげる時間すらないまま、臭い液体と化した。

      浑身插满箭的巨蛇突然起死回生,身体如遇水的粘土般溶解,竟分化成数条狭长的小蛇。小蛇腾空而起缠住了天马们的身体,如锁链般将它们掼向地面。跌入蛇群的骑兵们被蛇魔层层缠绕,连惨叫都来不及发出,就化为了一滩腐水。

      【蘇摩】

      「弓をしまえ!剣を抜け!」

      收弓,出剑!

      騎兵達は各々の剣を抜き、蛇の群れを切り裂こうとしたが、強靭な体に傷をつけるどころか、逆に巻き付かれ、剣を奪われた。蘇摩は木の上から飛び降りると、天馬を絞めつける蛇の体を辿って頭の方へ行き、蛇の口に向かって刀を振り下ろした。

      骑兵们纷纷拔剑,试图砍断蛇群,然而蛇身坚韧,反而缠住剑身将其夺走。苏摩跳下树枝,踩着蛇身一路向上追赶缠住天马的蛇头,一刀挡在了蛇口。

      【蘇摩】

      「はっ!」

      呵!

      刀に力を込めると、蛇は顎から真っ二つに切り裂かれた。少し気を抜いた途端、真っ二つに切り裂かれた蛇は二匹の少し小さな蛇となって、蘇摩に挟み撃ちを仕掛けた。窮地に立たされた蘇摩だったが、背後から迦楼羅に抱きかかえられた。林の中を飛んで逃げる二人を蛇が追いかける。

      刀锋将蛇从下颚处劈开,一路向下,直到蛇的身体化为两半。片刻的松懈,被劈成两半的长蛇竟重新化作两条更细的蛇,朝着中间的苏摩攻来。情急之下,迦楼罗从身后抓住苏摩就飞了起来,在林间躲闪,长蛇紧追在后。

      【蘇摩】

      「放しなさい!主将が戦場を離れるわけにはいきません!」

      放开我!战场上哪有主将先逃的道理!

      【迦楼羅】

      「主将だからこそ逃げるんだ。考えてみろ、この状況でお前がいなくなったら得するのは誰だ?」

      主将不先逃谁逃,都这时候了,你如果不在了,对谁有好处?

      この時、空中に突然巨大な蓮の法陣が出現した。ぼんやりとした輪郭が次第にはっきりしていく。蓮の中心から閉じた天眼が浮かび上がった。

      就在这时,空中突然出现了巨大的莲花法阵,原本模糊的轮廓在高天中逐渐变得耀眼,莲心中浮现出紧闭的天眼。

      ……幻境の中

      ——幻境之中

      帝釈天の白蓮の中から、霊神体の鬼手が数本出てきた。だが蛇神の背後から突然現れた蛇魔に拘束され、霊神体は蛇神の首の数寸先で止められた。

      帝释天的白莲中伸出数条灵神体鬼手,而蛇魔从蛇神背后突然冲出,将其束缚,灵神体停留在蛇神脖颈前数寸的位置。

      【ロチ】

      「ふふ、私に抗いながら天眼を出現させたか、実に面白い。天眼を呼び戻せば、まだこの審判場を脱出できるかもしれない。私も片時の興に免じてお前を見逃してやるかもしれないぞ。しかしそれでもお前の言う「愛」を選ぶなら、それは果たしてお前を強くさせるだろうか。それともお前に滅びをもたらすだろうか。すぐに分かるだろう。」

      呵呵,对付我的同时让天眼现世,真有意思。召回天眼,兴许你还有走出这审判场的机会,我或许也会看在这片刻乐趣的份上网开一面。若你还是选择你口中的「爱」,它究竟会使你强大还是会把你摧毁,马上就会见揭晓了。

      【帝釈天】

      「「愛」とは神々が人に押し付けるもの、善悪の区別は神の怠惰の象徴であり、世界に必要とされる法則ではないと言ったな。しかしそれが本当ならば、忉利天に作られた天界と天人は、なぜ愛憎を経験する?なぜ善悪を区別する?我々天人の創造主は、民に全てを捧げた。片時も責務を怠らなかった。己が統治者として失格だと判断すれば、民のために殉じた。よもや忉利天をも、陽界の創世の神をも超えたと自惚れているのか?」

      八岐大蛇,你既然说「爱」是神强加给世人的造物,善恶的区分更是神怠惰的象征,并非世界所必需的法则。但若真如此,那被忉利天所创造的天界和天人,又为何要享受爱恨,又为何要区分善恶?我等天人的造物主在世时,便为子民献上一切,不曾有一日的怠惰,在认为自身不适合再统治后,也为了子民而神形俱灭。你难道自诩是同时超越忉利天和阳界的创世之神吗?

      【ロチ】

      「創世の神だと?帝釈天、天照は光の神だが、光を作ったわけじゃない。忉利天は善神だが、善悪を作ったわけじゃない。もしこの世に本当に創世の神がいるとしたら、それは間違いなく千万の宇宙を駆ける観測者であり、全知全能かつ無為な神だ。そして我々は、神が真の「完全」を手に入れる途中の、「衰退」を収納している器の一つにすぎない。衰退こそが定められた運命であるならば、一体何故破壊の限りを尽くさない?一体何故世界の歩みを速めない?」

      创世之神?帝释天,天照虽是光明神,但并未创造光明,忉利天虽是善神,却并未创造善恶。倘若这世上真的有造物之神,祂一定是穿梭在这万千宇宙之中的观客,最全知全能却最无为之神。而我们,不过是使祂获得真正的「完整」的道路上,承载「衰亡」的器皿之一罢了。既然衰亡本就是命中注定的宿命,那我们为何不去破坏,不去加速这世界的进程?

      【帝釈天】

      「ははは、ひたすらに破壊を追い求めるあなたは、どこにいるかも分からない、逆らうこともできない「創世の神」に失望したのか? 」

      呵呵呵,如此潜心追求破灭的你,到底是对那不知在何处却又无法违抗的「创世之神」,感到了失望吗?

      【ロチ】

      「まさか。私は神が創造した光と希望にこうも好奇心をくすぐられている。同時に情熱に突き動かされ、神が与えてくれた世界を探求している。そして私の探求心は、全知全能でいるべき神と、神の創造物を遥かに凌駕している。故に、私はこの世界を解放したい。定められた運命から解放され、もっと自由に生きてほしい。人々に運命を探求させ、神の枷を解くことができるのは、私しかいない。その時、褒美として、この世の全ては私のものになるべきであり、私一人の命令に従うべきだろう。違うか?」

      怎么会呢。我是如此好奇着祂所创造出的光明和希望,又是如此热切地探寻祂所给予我的这个世界。而我的探寻之心,已远远超过本该全知全能的祂和祂的任何造物。因此,我才会想要解放这世界,让众生更自由地去活着,从既定的命运中彻底解脱。能让世人探寻这命运,解开这神之枷锁的,只有我一人。到那时候,作为奖励,这世间的一切造物,也都该属于我,听从我一人的旨意才对,你说不是吗?

      【帝釈天】

      「自信に関しては噂通りだな。」

      你的自信倒真是名不虚传。

      【ロチ】

      「さあ、決断の時だ。お前は部下を犠牲にするか?それともお前自身を犠牲にするか?」

      呵呵,已经到了抉择的时候,是放弃你的部下,还是你自己?

      【帝釈天】

      「迷う必要はない、私はどちらも犠牲にしない。」

      无需犹豫,两个我都不会放弃。

      空中の法陣は次第に明るくなっていき、蓮の中央にある天眼がゆっくりと目を開けた。白い光が降り注ぎ、蛇魔達は逃げていった。

      空中的法阵越发明亮,莲心中的天眼逐渐睁开,在投下的白光之中,蛇魔们纷纷退去。

      【毘瑠璃】

      「帝釈天様が助けてくれた!」

      是帝释天大人出手相助了!

      【蘇摩】

      「毘瑠璃、帝釈天様を守りなさい!」

      毗琉璃,赶快去保护帝释天大人!

      【毘瑠璃】

      「はっ!」

      是!

      ……幻境の中

      ——幻境之中

      【ロチ】

      「欲を出せば、どちらも失うぞ。」

      太贪心可是会两个都失去的。

      【帝釈天】

      「それはどうかな。この際だ、私も全力を出そう。」

      那可不一定。事已至此,我也放手一搏吧。

      ……林の中、陣眼の近く

      ——山林中的阵眼前

      その時、もう一つの黒い法陣が突然空に出現し、蓮の法陣を包み込んだ。禍々しい赤い光を放ちながら、天眼の発動を阻害している。黒い法陣の中から六本の漆黒の触手が現れ、陣眼の中央にいる巨蛇を引き裂いた。法陣が消えると帝釈天は力を取り戻し、霊神体は素早く蛇魔の拘束から脱出した。帝釈天の精神意識がヤマタノロチの幻境を離れると、空中の法陣と巨大な手はすぐに消え、生き残った天人の兵士達だけが取り残された。

      就在这时,另一个黑色的法阵从天而降,将莲花法阵包裹,阻止了天眼的发动,迸发出不祥的红光。黑色阵法中伸出六条漆黑的触手,将阵眼中心的巨蛇撕裂。法阵消去后力量回到了帝释天的身上,灵神体迅速挣脱了蛇魔的束缚。帝释天的精神意识离开了八岐大蛇的幻境,空中的阵法和巨手也很快随之消失,只留下存活的天人士兵一行。

      【蘇摩】

      「さっきの黒い法陣はどういうことですか?あなたは知っているのでしょう?」

      刚才的黑色阵法是怎么回事,你该不会是知道些什么吧?

      【迦楼羅】

      「一応知っているさ、あれは兄貴の結界だ。」

      说知道也算是知道吧,那个嘛,其实是我大哥的阵法。

      【蘇摩】

      「彼も恩返しのために竜巣城からここに来たのですか?」

      你大哥也是从龙巢城逃出来报恩的?

      【迦楼羅】

      「恩返しじゃねえ、意趣返しだ!ぐずぐずしちゃいられねえ、早く兄貴に事情を報告しねえと、命の危険がある。蘇摩、また今度な。」

      他报什么恩啊,他那分明是来讨债的!事不宜迟,我得先回去找我大哥复个命,否则会有性命之忧。苏摩,咱们日后再聊。

      そう言うと、迦楼羅は蘇摩を木の上に降ろし、慌てて飛んで行った。舞い落ちる黒い羽が蘇摩の視界を奪った。

      说完,迦楼罗就把苏摩放下在树梢上,急急忙忙头也不回地飞走,黑色的羽毛扑簌簌地落了苏摩一身。

      【蘇摩】

      「本当に変な人。結局、彼の恩人が誰なのかも分からなかった。」

      真是个莫名其妙的人,到头来,都还没说他找的人到底是哪个。

      目が覚めると、帝釈天は既に馬車の中に戻っていた。

      等到帝释天再次醒来时,已经回到了马车之中。

      【帝釈天】

      「打ち負かすことはできなかったが、駆け引きで油断させて彼を出し抜き、居場所を突き止めることができた。早く晴明に伝えねば。しかし予想外の人が現れたな……あの熾烈な力、なぜか懐かしいような。ヤマタノロチは全く驚いていなかった。つまりこれは彼の想定内なのだろう。しかしヤマタノロチの同盟者であるならば、なぜ我々天人一族を助けたのか。」

      虽然没有成功击破,但还是在博弈中使他放松警惕,让我找到了他的藏身之所。这件事得赶快告诉晴明。只是那意外出现之人……那炽热的力量,竟让我觉得如此熟悉。既然八岐大蛇并未惊讶,想必是他意料之中,可若是八岐大蛇的盟友,又为何会对我天人一族伸出援手。

      立ち上がろうとした帝釈天は、ようやく馬車の窓に特別な印が残されていることに気づいた。

      准备起身时,帝释天这才注意到马车窗上,有人留下了一枚奇特的印记。

      【帝釈天】

      「どこかで見たような模様だ。」

      我好像在哪里见过这个纹样。

      しばらく考え込んだ後、帝釈天は思い出した。天域の辺境で刺客に襲われた時、助けてもらった民家の中で同じ印を目にしたことがあった。

      几番回忆下,帝释天记起自己在天域边境遇刺时,在救助了自己的民家中看到过这样的印记。

      【阿修羅】

      「ん?この胸の模様のことか?子供の時はなかったが、いつの間にかできていた。気づいた時には、もう百年ほど過ぎていたが。」

      嗯?我胸口的这个花纹吗?小时候没有,我也忘了是什么时候就长出来的了,等察觉到的时候,都已经过了百年了。

      【帝釈天】

      「自分の体なのに、大雑把すぎないか……」

      自己的身体,竟然这么不上心吗……

      【阿修羅】

      「噂によれば、鬼族は妖力の影響で体に模様が出やすいようだ。俺は鬼族ではないが、どうやら混血のようだ。妖力こそないが、何かの原因で妖紋が現れたのだろう。」

      传闻鬼族身上容易因为妖力变化长出纹路来,我虽然不是鬼族,但似乎是个混血,即便没有妖力,大概偶尔也会长出些妖纹吧。

      【帝釈天】

      「炎のような形だな。」

      看形状似乎是一簇火焰。

      【阿修羅】

      「炎じゃない、蓮だ。」

      不是火焰,是莲花。

      【帝釈天】

      「炎のように燃える紅蓮か?聞いたことがないな。」

      火焰般颜色的红莲吗?这可是闻所未闻。

      【阿修羅】

      「俺は見たことがある。」

      我见过。

      【帝釈天】

      「まさか門の前のあの池で見たのか?」

      难不成是门前那片池塘?

      【阿修羅】

      「そこじゃない、他のところで見た。遥か遠い場所だ。そこでこんな紅蓮を目にした。」

      不是在这,是在别处,离这里很遥远的地方,我在那里见过这样的红莲。

      【帝釈天】

      「あなたはどう見ても武将だが、狩人だと言い張っている。戦闘に長けるが軍には入らない。こんな辺鄙なところに住んでいるが、都のことは熟知している……鬼族の混血と名乗っているが、天人の貴族と平民の衝突に関しても一家言を持っている。私が天人の王だと知っても特に驚く様子はなかった。そのうえ遥か遠い場所に行って、特別な花を目にしたことがある……本当に不思議な人だ。あなたは本当に、私の臣下となり、共に王城に戻ることは望んでいないのか?」

      你看起来明明是个武将,却偏偏自称是猎户,精于战斗却不肯参军,居住在这么偏僻的地方,却对都城中所发生的事情了若指掌……自称是鬼族混血,却对天人贵族和平民的矛盾颇有见解,即使知道我是天人之王也不曾惧怕,还曾经去过那么遥远的地方,见过那般特别的花……真是个奇特的人。你当真不愿意和我回王都,做我的臣子吗?

      【阿修羅】

      「たまたま通りかかったから助けてやっただけだ。家の近くで誰かが倒れているのも見たくないしな。これ以上しつこくするなら追い出すぞ。」

      我救你就只是因为刚巧路过,不愿意看到有人在我家门口落难罢了,若是你再这么纠缠不休的,我怕是就要后悔,把你请出门外了。

      【帝釈天】

      「分かった、悪かった。でもせめて名前くらい教えてくれないか?」

      好了,我不说了,至少告诉我你的名字吧?

      【阿修羅】

      「扉の前にある激辛唐辛子を見たか?一つでもいい、あれを食べたら教えてやる。」

      看见门前挂的那一串魔鬼椒了吗,你吃一个,我就告诉你。

      それを聞いた帝釈天はしばらく黙り込んだ。しかしその後仰々しく激辛唐辛子を摘もうとすると、相手に止められた。

      帝释天闻言沉默片刻,故意做出一副大义凛然的表情,起身要摘门上的魔鬼椒,却让对方按了回去。

      【帝釈天】

      「止めないでくれ、私はあなたのような臣下がほしい。」

      别拦着我,我求贤若渴。

      【阿修羅】

      「やめておけ、代わりに一つ約束する。いつかこの印と同じような紅蓮を目にした時、お前は自ずと俺の名前が分かるだろう。」

      算了,不如我们做个交换吧。等到哪天你见到了如同这印记一般的红莲,你就会知道我的名字。

      【帝釈天】

      「お安い御用だ。天人の王である私が命令を下せば、すぐに見つかる。」

      这有何难,身为天人之王,只要我下令,总有人会替我寻到的。

      【阿修羅】

      「その方法では見つからない。」

      他们寻不到的。

      【帝釈天】

      「まさか嘘なのか?本当は、この世にそんな紅蓮は存在しないのか?」

      你难不成是骗我,世上根本没有这样的红莲?

      【阿修羅】

      「嘘ではない、この世に紅蓮は実在する。だが、お前が紅蓮の咲き誇る姿を目にすることはないと願おう。」

      我可没骗你,世上确实有这样的莲花。只不过,我希望你永远不会再看到它绽放的那一天。

      その後、この新しい友人と別れた帝釈天は都に戻り、暗殺の件を徹底的に調べるよう命じた。捜査を開始して間もなく、十天衆が王の行方を鬼族に漏らしていたことが発覚した。帝釈天が十天衆を解職し、彼らが支持する貴族制度を廃止するのに、数ヶ月かかった。友人を訪れるべく天域の辺境に戻った時、帝釈天は埃の厚く積もった部屋しか見つけることができなかった。毘瑠璃に声をかけられ、思い出に浸っていた帝釈天は現実に引き戻された。

      在那之后,帝释天告别了这位新结识的友人,回到都城,并下令彻查自己遇刺一事。很快牵扯出了十天众里通外敌,将王的行踪透露给鬼族一事。等到帝释天罢免了十天众,并废除了他们所扶持的贵族制度,已是数月后的事了。重新回到天域边境拜访友人的帝释天,却只找到了一个落满灰尘的房子。毗琉璃的声音将帝释天从回忆中拉了出来。

      【毘瑠璃】

      「帝釈天様、陣眼の鎮圧が完了しました。」

      大人,阵眼已经成功镇压了。

      【帝釈天】

      「毘瑠璃、炎のように咲き誇る紅蓮を目にしたことはあるか?」

      毗琉璃,你可曾见过像火焰般绽放的红莲?

      【毘瑠璃】

      「ありません。」

      不曾见过。

      【帝釈天】

      「そうか。今日はご苦労だった、皆と一緒にゆっくり休むといい。もうすぐ、決戦の時が訪れる。」

      是吗。今天真是辛苦你们了,先带大家下去休整一下吧。很快,就是决战之时。
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第56章 终焉之章 ⑤世界

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