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2、帝释天 绘卷第一章:英雄 ...

  •   彼らは天域と鬼域との辺境にある村で出会った。

      他们相遇在一个天域与鬼域交界的城庄。

      その頃の帝釈天は、まだ名もない若者の一人に過ぎなかった。天人と鬼族との千年に渡る戦争の中、彼は一族の者に従い、何度も故郷から逃げ出した。天域の長たる十天衆の支配下で暮らす彼は、日々貴族達の愚策を嘆いていた。

      彼时的帝释天还只是一个名不见经传的年轻人,在天人与鬼族的千年战争中,随着众族人们一起放弃故土一退再退。在天域领袖十天众的手下,日复一日地为贵族们的昏庸决策而扼腕叹息。

      彼は伝説の戦士たちに憧れていた。残虐な鬼族を前にしても、偉ぶる貴族たちを前にしても、真っ直ぐに立ち、決して運命に屈しない英雄たちに憧れていた。

      同时也向往着那些传说中的战士,那些无论面对残忍的鬼族,还是道貌岸然的贵族们,都一样站得笔直,永不肯向命运低头的英雄。

      しかし生まれつきの力が霊神体の能力によって決まってしまう天人の中で、精神感応能力しか持たない彼が戦士になることは、ほぼ不可能な話だった。

      然而在以灵神体能力决定先天力量的天人中,只有心灵共感能力的帝释天想要成为一位战士,几乎是不可能的。

      「戦士にはなれないけれど」帝釈天はこう考えていた。「もし英雄の役に立てるなら、たとえ死んでも本望だ。」

      “虽然我无法当上战士,”帝释天想道,“但若能帮助真正的英雄走向胜利,那即使献上性命,也足够了。”

      そんな簡単な願いを胸に、貴族の名しか持たない彼は平民の若者を集め、「翼団」と言う名の組織を立ち上げ、天域の戦場の最前線で食糧を運び、逃げてきた難民たちを助けていた。しかし千年続いた戦争にとって、その努力はまさに焼け石に水でしかなかった。村を救おうとしたが、辿りついた時には村人は既に全員息絶えていた。兵糧を運ぼうとしたが、到着した戦場に生者は一人もなかった。

      怀着这样简单的心愿,无权无势却空有贵族之名的帝释天集结了一群平民中的年轻人,他们建立了一个名为「翼之团」的组织,在天域边境战事的最前线运输粮草,帮助逃亡的难民。然而这一切在持续了千百年的战争前,也不过是杯水车薪,前去解救的村落赶到时已经没有活口,运送粮草的车连夜到达战场时已尸橫遍野。

      戦場だった荒れ地で、苦しそうな顔をする死体は、命が尽きる瞬間まで運命から逃れようと体を動かそうとしたが、希望はついぞ訪れなかった。

      一片狼藉的战场,带着扭曲表情死去的同族,在生命的最后一刻都保持着试图逃离命运的姿势,却没有等到奇迹的前来。

      「どうしてもっと早く来れなかった?」帝釈天は自分に問いかけた。

      “为何我不能早点到呢?”帝释天问自己。

      「どうして彼ら最後の期待に応えられなかった?」

      “为什么我没能回应他们最后的祈求?”

      「どうして私は本当の英雄になれない?」

      “为什么我成为不了真正的英雄?”

      そして……

      以及——

      「どうして本当の英雄は、彼らの前に現れなかった?」

      “为什么真正的英雄没有为他们而来?”

      帝釈天は自分に問いかけ続けた。しかしそれでも、彼は陥落していく辺境を離れなかった。ただ食糧を積んだ車と共に、死に絶えた村を訪れ続けた。

      帝释天不停质问自己,但即使如此,他也没有离开日渐沦陷的边境,推着粮车经过一个又一个无人生还的村落。

      そしてある日、新しい伝説が神の奇跡のように突然現れた。

      直到有一天,一个新的传言如同从天而降的福祉一般突然到来。

      「漆黒の戦士に助けられました。」生き残った人達はこう言った。「鬼族は彼に気づくと、一目散に逃げ出しました。」

      “一个浑身漆黑的战士救了我们。”被救下的人们说道。“鬼族看到他来,全都吓得四散奔逃。”

      「彼は鬼族の瘴気の中でも自由に行動できます。あんなに強い霊神体は、今まで見たことがありません。あの黒い触手が軽く動くと、悪鬼どもは八つ裂きなりました。」

      “他能在鬼族的瘴气里穿梭自如,我从没见过那么强大的灵神体,那黑色的触手只是稍稍一挥舞,就将恶鬼们撕成碎片。”

      「もし天人族が皆彼のように強かったら、戦争はとっくに終わっているはずです。」

      “如果天人族每一个人都能像他那样,战争一定早就结束了。”

      天域の無限に広がる灰色の空の下で、帝釈天は皆の片言をかき集め、伝説の英雄の姿を描き出した……彼は黒い妖気を纏った、最強の霊神体の持ち主で、神の如く戦場に現れ皆を救うと、またどこかに消えてしまう。彼はどこから来たのか、どこに向かっているのか、名前はなんなのか、誰もその答えを知らない。

      面对着天域无垠却永远阴霾的长空,帝释天从人们的只言片语中勾勒出了一个传奇的英雄——他浑身缠绕着黑色的妖气,有着最强大的灵神体,如同天神一般出现在战场,救下所有人后,又突然消失不见。谁也不知道他来自哪里,又去往何处,谁也不知道他叫什么名字。

      「彼に会いたい。」帝釈天はそう思った。

      “我想要与他相见。”帝释天想道。

      奇しくも、その願いは誰かに届いたようだった。

      冥冥之中,似乎有谁听到了他的愿望。

      ある日食糧を運ぶ途中、帝釈天と仲間達は鬼族に待ち伏せされた。鬼族は道に瘴気を放ち、それに気づいた時、彼らの霊神体は既に瘴気に侵され、動くことすらできなかった。隠れていた鬼族が押し寄せ、抵抗する力すら持たない翼団兵士を屠り始めた。

      一天在运输粮草的路上,帝释天和他的同伴遭到了鬼族的伏击,鬼族们在路上释放了瘴毒,等一行人察觉不对时,灵神体已经被瘴气损害,无法行动,伏击的鬼族冲了出来,屠戮起毫无反抗之力的翼之团士兵。

      仲間達が次々に、鬼族の鋭い爪に切り裂かれていく。さっきまで話していた者が、瞬く間に蠢く肉の塊に化した。瘴気と恐怖に支配された帝釈天は、地に倒れて動けない。か弱い彼は無事に戦場から生きて帰ることができるとは思っていなかった。しかしいざ本物の死が訪れると、彼は恐怖を覚え、同時に奇跡を願った。

      鬼族的利爪撕碎了一个又一个的同伴,方才还与自己谈笑的人瞬间变成了地上蠕动着的尸骸,瘴毒和恐惧使得帝释天瘫软在地上动弹不得,弱小无力的他从没想过活着离开这片战场,然而当真正的死亡来到眼前,他在恐惧之余,却向命运祈求奇迹的转机。

      「今日初めて会った兵士も、罪なき村人も、戦争に巻き込まれて死ぬ定めからは逃れられない。これが弱さの対価なのか?」

      “哪怕是今天头一次见面的士兵,也要为纷争而死,哪怕是无辜的村人,也要为战争而殒命,这难道就是弱小的代价吗?”

      「この世から争いが消える日は、永遠に訪れないのか?」

      “难道这世上,就没有所有纷争都会消失的一日?”

      「皆の心が通じ合う瞬間は、永遠に訪れないのか?」

      “就没有所有人都能心意相通的一瞬?”

      「全ての痛みが消える時は、永遠に訪れないのか?」

      “就没有所有痛苦都会平息的时代?”

      「伝説の英雄は、至高の王者は、本当に存在しないのか?」

      “就没有一个唯一的英雄?一个至高无上的强者?”

      「その者が全ての争いの頂点に上り詰め、永久の平和が訪れたと宣言する日は、永遠に訪れないのか?」

      “在他爬上所有战争的最高处的那一刻,宣布从此永远的和平将到来吗?”

      混乱し絶望しきったその瞬間、死を告げる悪鬼の爪が振り下ろされるのを待つ帝釈天が頭を上げると、漆黒の阿修羅が見えた。

      在那个混乱又绝望的瞬间,在恶鬼的利爪下等待着死亡的帝释天抬起头来,看见了漆黑的阿修罗。

      その瞬間、死は恐怖ではなくなった。その瞬間、絶望は忘れ去られた。

      死亡在那一瞬间突然不再可怕,绝望在那一瞬间被抛诸脑后。

      人々が謳う伝説のように、それは漆黒の妖気を纏う戦士だった。人々が倒れる中、彼だけは自由に行動できる。彼は帝釈天が見たことのないような霊神体を持っていた。六本の真っ赤な触手が刃のように鬼族に振るわれ、伝説の中の鬼神の如く敵を虐殺し、何度も何度も敵の胸に武器を突き刺した。悪鬼どもは四方から同時に襲ってきたが、彼は難なく引き裂いた。

      就如同人们口口相传的传说中那样,那是一个浑身缠绕着漆黑妖气的战士。在所有瘫倒在地的人群中,只有他一个行动自如,他有着帝释天见过最骇人的灵神体,六条猩红的触手像利剑般朝鬼族挥舞而去,如同传说中的鬼神一般所向披靡,将武器一次又一次地送入敌人的胸膛,恶鬼们同时从四方攻击试图包围他,被他毫不费力地一并撕碎。

      汚い黒血が一面に広がったせいで、動けない帝釈天は全身血まみれになった。彼は目を見張った。目を閉じた瞬間に、突然目の前に現れた奇跡がまたと消えることを恐れるように。

      肮脏的黑血溅了满地,溅了不能行动的帝释天一身,帝释天从头到尾都睁大了双眼,生怕自己一闭眼,眼前的奇迹会如同他出现那般又凭空消失。

      そのおかげで、黒い戦士の自信溢れる顔が狂乱に変った瞬間を、帝釈天はしかと見届けることができた。

      正因如此,帝释天也真真切切地看清了,黑色战士脸上的笑容从自信变成疯狂的那一瞬间。

      待ち伏せしていた鬼族はあっという間に全滅した。辛うじて生き残った兵士達がなんとか身を起こした時、あの狂暴な戦士は急に獣のように恐ろしく唸り始め、触手を一族の者の胸に突き刺した。少し経つとまた別の仲間を狙い、触手を差し込みそしてまた抜いた。その体は血まみれになったが、やめようという意志は少しも感じられない。その狂暴な精神に侵され、周囲の人々も狂乱し、敵味方関係なく攻撃し始めた。

      伏击的鬼族很快就被杀尽,几个残存的士兵挣扎着爬起来正要庆贺,那狂暴的战士却突然发出野兽一般可怕的嘶吼,触手瞬间穿透了同族的胸膛。片刻后又刺向其他同伴,刺穿又拔出,血浸透了他的身体,他却丝毫没有停下的意思,受到他狂暴精神的影响,周围的人也开始陷入疯狂,不分敌我地互相攻击。

      仲間達の痛みが、津波のように帝釈天の意識の中になだれこんできた。他人の数えきれない苦痛の中で、彼の霊神体は自分にしか聞こえない悲鳴を上げた。奇跡は一瞬消えかけたかもしれないが、帝釈天にとって、希望はまだ焔のように燃え盛っている。あの瞬間彼は決意した。この身が滅びようと、決して希望の明かりを絶やさないと。

      同伴们的痛苦像洪流一样冲进帝释天的意识,他的灵神体发出只有他能听见的悲鸣,层层叠叠来自他人的痛苦之中,或许奇迹黯淡了一瞬间,但对帝释天而言,希望仍旧炽热地如同火焰,那一瞬他下定决心,哪怕粉身碎骨,也不能让奇迹熄灭。

      苦痛の中、帝釈天はなんとか動き出した。狂乱した黒い戦士を目掛けて這い進み、自分を刺そうとする触手を掴んだ。

      痛苦之中帝释天挣扎着爬了起来,朝着那名发狂的黑色战士爬过去,一把抓住了他剌向自己的触手。

      次に起きたことは、彼自身も予想だにしていなかった。なぜそんな勇気が出たのかはわからない。頭が反応する前に、彼の霊神体は錯乱した戦士に手を伸ばしていた。

      随即连他自己都愣住了,不知自己是哪里来的勇气,尚来不及反应,他的灵神体已朝着发狂的战士伸出了手。

      その瞬間、空気中に立ちこめていた狂気が消えた。帝釈天の霊神体が無理やり彼の狂乱を分担すると、彼は正気を取り戻した。元に戻った戦士は、驚いた顔で彼を見つめた。

      就在那一瞬,空气中的狂气戛然而止,帝释天用他的灵神体强行分担了这位初见者的暴乱之欲,让他清醒了过来。恢复如常的战士惊讶地看着他。

      「それがお前の能力か?」彼はこう聞いた。

      “这就是你的能力吗?”他问道。

      「その通り。」災いから逃げ切った帝釈天は、ほっと安堵の息を漏らした。疲れ切った彼は地面に倒れ、笑った。 「成功してよかった。心配していたんだ、失敗して、あなたを死なせてしまったらどうしようって。」

      “没错,”劫后余生的帝释天松了一口,他笑道,随即筋疲力尽地栽倒在地,“我也没想到居然会成功,我刚刚还在想,我要是失败了,让你死去可怎么是好。”

      「こういう時は自分が殺されないか心配すべきじゃないのか?」黒い戦士は疑問を口にした。「変わったやつだ。俺は阿修羅だ、お前は?」

      “这种紧要关头你难道不该害怕我把你杀了吗?“黑色战士问道,“你可真是个怪人,我叫阿修罗,你叫什么名字?”

      「帝釈天だ。」

      “我叫帝释天。”

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